リザルトノベル『ヨハネの使徒討伐』        

『ヨハネの使徒討伐』 参加者一覧

黒憑・燃
清十寺・東
ステファニー・ヘルツ
クラリス・ヘルツ
響・神原
愛華・神宮慈
ラシーファ・エルダム
アルティス・ディア
エレノラ・セシール
リア・エクス
リトル・フェイカー
パンプティ・ブラッディ
朱輝・神南
碧希・生田
ローザ・スターリナ
ジャック・ヘイリー
藤森・卓也
アースィム・マウドゥード
エミリア・リンク
ルカス・アプフェル
ツバキ・アカツキ
サザーキア・スティラ
最上・ひろの
ルシエロ・ザガン
薙鎖・ラスカリス
モニカ・モニモニカ
シュリ・スチュアート
ロウハ・カデッサ
トウマル・ウツギ
グラナーダ・リラ
明智・珠樹
白兎・千亞

リザルトノベル


 教皇国家アークソサエティ国境。
 そこは巨大な壁で覆われている。
 様々な脅威から人々を守るための物だ。
 それを背にして緊急指令を受けた浄化師達が集まっていた。

「やはり気は進まんな」
 人々を守るための壁を見詰めながら『愛華・神宮慈』は呟いた。
 彼女の懸念はヨハネの使徒を自分達が集めることにある。
 蒸気船を作るためのヨハネの使徒討伐と残骸集め。
 将来を見据えれば必要なことは分かるが対処を間違えれば街を危険にさらすことになる。
 そんな彼女に『響・神原』は言った。
「大変な指令ですが、引き受けたからには成し遂げましょう」
 響の思惑は戦闘経験を積むためだったが、愛華がやる気を出してくれれば最善だ。
 なので、やる気を出して貰おうと彼女の好物を口にする。
「厳しい戦いになるでしょう。ですから戦ったあとの疲労を減らすために、秘蔵の甘いお菓子を用意しています」
「……秘蔵?」
「はい。お茶に良く合います」
 緑茶に甘いもの。
 愛華の好きな物が揃い踏みである。
「そうか」
 やる気を見せる愛華。
 そして同時に万が一にも壁を越えさせまいと戦う際の配置を考えていく。

 そうして戦いの準備をしているのは『リチェルカーレ・リモージュ』と『シリウス・セイアッド』そして『アリシア・ムーンライト』と『クリストフ・フォンシラー』も同様だ。

「シアちゃん、頑張ろうね」
 リチェルカーレはアリシアに呼び掛ける。
 指令などで交流がある2人は、気心が知れた相手に親しげに呼び掛ける。
「はい、頑張ります」
 そこにクリストフが会話に加わる。
「俺達は引きつけ役だけど、戦えるなら加わった方が良いと思うんだ。その時は、どう動こうか?」
 クリストフが言うように、今回の指令をこなすにあたって、浄化師達は幾つかの役割に分かれている。
 そのひとつが、ヨハネの使徒の引きつけ役だ。
 あまり多くなり過ぎるとヨハネの使徒が集まり過ぎるので人数は調整されているが、10人ほどが担当に就いている。
 それだけの戦力が引きつけ役だけに集中するのは勿体ないため、状況が整えば戦うに越したことはない。
「リチェちゃんと、被らないように、目を見て合図をしながら、回復をします……」
 回復役を申し出るアリシア。
 長期戦を覚悟するべき集団戦では、特に大事な役割だ。
 ここをないがしろにすると確実に戦線が崩壊する。
 だからこそリチェルカーレも回復役に就く。
「私も回復役に就きます。それと鬼門封印も使って、ヨハネの使徒の動きを抑えようと思っています」
 彼女達の応えを聞いてシリウスは言った。
「なら、2人を護衛する必要があるな。状況に応じて、連携を取ろう」
 クリストフに呼び掛けると彼も同意する。

 準備は着々と整っていく。

「引きつけ役の人達、あそこに集まってるみたいだ。みんなの所に集まろう」
 戦力がばらけないよう『エレノラ・セシール』は『リア・エクス』に呼び掛ける。
 それはリアが出来る限り怪我をしないようにという過保護なエレノラらしい考えもあってのものだが、当のリアは戦う気で満々だ。
「みんなでやれば倒しがいあるしな! よっしゃ行くぞー!」
 これに心配そうに返すエレノラ。
「リアは武器を持っていないんだから、気をつけて戦うんだよ」
「わかってるって!」
 意気込み一杯のリアに、なおのこと気遣うエレノラだった。

 パートナーのことを想いながら行動しているのは『リトル・フェイカー』と『パンプティ・ブラッディ』も同じだ。

「回復に動くんだな」
 引きつけ役として他の浄化師達とかたまりながら戦いの準備をしているリトルに、パンプティは言った。
「はい。皆さんの後ろで、支援に動こうと思います」
「そっか。なら安心して前に出て戦える」
 笑顔を浮かべるパンプティに、リトルは誇らしげな喜びを滲ませながら返す。
「頑張ります」
「頼むぜ、相棒」
 パンプティは、くしゃりとリトルの頭を撫でると、不退転の決意を込め前衛へと赴いた。

 パートナーと戦い方を決めているのは『朱輝・神南』と『碧希・生田』も同様だ。

「皆と出来るだけ離れないようにして戦いましょう」
 朱輝の提案に、碧希は力強く応える。
「なら俺は、ペンタクルシールドを張って前に出るよ。そうすれば、皆を守れるかもしれない」
「良いと思うけど、無理をしちゃだめよ」
「うん、大丈夫。朱輝も守ってあげるからね」
「ありがとう。なら私も頑張らないと。ヨハネの使徒を出来るだけ引き付けて、少しでもいなせるように動こうと思うの」
「朱輝なら出来るよ! 2人で一緒に頑張ろう!」
 お互いを元気づけながら、2人は戦いの準備を整えていく。

 引きつけ役の皆が準備を整えているように、討伐組も当然のように準備を整えている。

「ヨハネの使徒を倒して船のパーツにというのは……ふむなかなか面白いな」
 討伐組として配置に就きながら『アーカシャ・リリエンタール』は言った。
 これに『ヴァン・グリム』は返す。
「後のことはよく分からんが、とりあえずヨハネの使徒を倒せばいいんだろう?」
「そうだね。私は絡縛糸を使って、動きを出来るだけ止めようと思う。 国土外にでられると厄介なことになるからね」
「ならオレは、他の奴の邪魔にはならないようにして、指示があったら従うとするか」
 被害を出来うる限り少なく、そして仲間との連携も意識して2人は戦いの準備をしていく。

 着々と討伐組も準備を整えていく。
 彼ら、あるいは彼女達の中には、ヨハネの使徒に対する激情を持つ者も居る。
 それは『ラニ・シェルロワ』と『ラス・シェルレイ』も同じだった。

「大丈夫か?」
 言葉少なく、ラスはラニに問い掛ける。
 2人の間なら、その言葉だけで意味は伝わる。
 それほどに、2人にとってヨハネの使徒は憎悪の対象だ。
「あたしなら大丈夫」
「無理はするなよ」
 言葉の抑揚は静かなもの。
 けれどそれは激情を抑えているからこそのものだ。
 大切な人達を奪ったヨハネの使徒。
 一歩間違えれば暴走しそうになる激情を、親友達との思い出、そしてパートナーとの絆で抑えきる。
 それでも激情を胸に戦いの時を待っていた。

 自らを抑えながら待つ者が居る一方で、戦意を高めていく者達も。

「腕に覚えのある連中が引き付けてくれる。っかー、狙い撃ちにはいい条件じゃねぇか」
 戦いの予感に高揚しながら『エミリア・リンク』は戦意を高める。
 そんな彼女にパートナーである『ルカス・アプフェル』は問い掛ける。
「えみりあ、しろいの。こわす、する?」
「おう、合ってんぜ」
 エミリアは笑顔を浮かべ、ルカスに戦いの手引きを教える。
「ルキは、そうだな。白いの動けなくしてくれ」
「うん。わかった」
 ルカスは頷き、ぎゅっと手を握ってやる気を見せた。

 浄化師達が準備を整える中、陣形も決まっていく。
 今回の戦いでは大きく分けて2つの役割に分かれている。
 ヨハネの使徒の引きつけと討伐だ。
 引きつけ役は国境の壁を背にしてかたまり円陣になるよう配置に就いている。
 そして討伐組は引きつけ役を囲むようにして距離を取り、いつでも動けるようにしていた。

 この配置の効果は大きく2つ。

 ヨハネの使徒を誘い込み逃がさない檻としての効果がひとつ。
 もう一つは檻の内側に大量のヨハネの使徒が一度に流れ込まないようにする壁としての効果だ。
 これは引きつけ役が、いかに効率よく引き付けられるか。
 そして檻と壁の役割を強く持つ討伐組が、いかに内側に位置する引きつけ役と協力してヨハネの使徒を捌いていくかに掛かっている。
 巧くこなせば一度に戦うヨハネの使徒の数を調整しつつ、討伐組と引きつけ役で前後で挟みながら攻撃も出来るのだ。

 そうして準備を整えた所で引きつけ役が魔術真名を唱え魔力生成を開放。
 魔力を高めた所でアライブスキルを使用し引きつけを開始する。
 周囲の警戒をしつつ続け、やがてヨハネの使徒が現れる。
 静かに、だが確実に。
 それぞれ異なる方向と距離から止まることなくやって来る。
 総数は10体。
 一度に来れば苦慮しかねない数だが、幸い連携してやって来る様子はない。
 これは今回やって来たヨハネの使徒だけの特徴なのかは分からなかったが、少なくとも一度にまとめて襲い掛かって来ることは避けられた。
 しかしそれもヨハネの使徒を次々に倒せていければの話だ。
 合流し数が増えるよりも早く倒していく。
 ある種のタイムトライアルに近い戦いが始まった。

「さぁ、私と千亞さんと共に死のダンスを踊りましょう……!」
 近づくヨハネの使徒を迎え入れるように『明智・珠樹』は両腕を広げる。
 これにパートナーである『白兎・千亞』は注意するように声を上げる。
「2人だけで戦うんじゃないんだ! 皆と足並みを揃えることを考えろよ!」
 これに明智は朗らかな笑みを浮かべ返した。
「大丈夫です。いつでも私は千亞さんに釘付けですから!」
「ヨハネの使徒に集中しろー!」
 いつものように掛け合いをしながら、しかし2人の動きは息が合っていた。
 舞うように、お互いの動きを補いながら。
 ヨハネの使徒を引きつけるように動いていた。

 それに気付いたのか敵の第一陣の内、1体が向って来る。
 第一陣の数は2体。
 残りの8体達は、時間差で3体と3体が別方向から。
 残り2体は、更に遅れてやって来る。
 その歩みは淡々と変わりなく。
 迎え撃つ浄化師達が居るというのに変わることはない。
 どこまでも機械的で無機質な反応しかなかった。

「生きてる感じがしないって言うか、何だか気味が悪いわね……」
 ヨハネの使徒の様子に『ツバキ・アカツキ』は呟くと、パートナーである『サザーキア・スティラ』に言った。
「協力して1体ずつ確実に倒していきましょう。ワタシは前に立ってカウンターを狙うから、サザーはそれに合わせてね」
「何だか面倒そうだにゃ」
 行動原理や習性がほとんどネコなサザーキアにツバキは、やる気を出させるべく返す。
「サザー、ここで頑張ったらおやつ割増よ!」
「ウニャー! 一匹残らず倒してやるニャー!」
 やる気増し増しなサザーキアであった。

 そうして巧く誘い込み、やる気を見せながら浄化師達はヨハネの使徒に攻撃を開始する。

「紅き星に誓う」
 魔術真名を唱え『シュリ・スチュアート』と『ロウハ・カデッサ』は戦いを開始する。
 2人は常に並び、お互いの剣であり盾であるかのような動きを見せていく。
 狙うはヨハネの使徒の核。
 最短にして最適の攻撃を言葉を交わすことさえなく連携を重ねていく。
(この力はあなたの戦いを支えるため)
 シュリは、敵の間合いに跳び込むロウハを守るように、ペンタクルシールドを張りヨハネの使徒の注意を引くような動きを見せる。
 ロウハは裁きⅡにより攻撃力を高めた状態で、天空天駆を使いヨハネの使徒の核を目掛け真っ直ぐに跳び込む。
 振るわれるソードバニッシュ。
 閃光のような速さで振るわれた一撃は、核に一条の傷を刻んだ。
(そばにあんたがいるからこの剣は切れ味を増す)
 その想い通りに、2人の連携はお互いを高め合い敵に傷を与えていった。

 そこに『ルシエロ・ザガン』と『最上・ひろの』が追撃を叩き込む。

「まずは、倒すだけだ」
 ルシエロは仲間の浄化師達と位置が重ならないよう注意しながら攻撃を加える。
 舞うかのような軽快な動きで間合いを詰めると、動きの軽やかさからは想像できないほどの重い攻撃を放つ。
 一撃を加えれば即座に距離を取る。
 それはパートナーの追撃が入り易くするため。
(近づき過ぎないように注意しないと)
 ひろのは仲間の邪魔にならない位置取りに気を付けながら、呪符を介した魔術弾を叩き込む。
 それはヨハネの使徒の核に命中。
 細かなひびを走らせる。
 彼女は目の前の1体に集中しながら、いつでも他の支援に動けるよう考える。
(核の場所は共通、なのかな)
 少しでも仲間の傷は少なく、ヨハネの使徒を倒すために。
 戦いの中でも敵への観察を怠らなかった。

 繰り返される浄化師達の攻撃。
 それは『藤森・卓也』と『アースィム・マウドゥード』も例外ではない。

「無理せずほどほどにやろうぜい?」
 パートナーであるアースィムへの心配を、おちゃらけた態度で隠し、卓也は敵の間合いへと跳び込む。
(まだ魑魅魍魎の壁は早いか)
 戦闘の序盤ということもあり仲間の魔力も尽きる者は居ない。
 アースィムも十分に距離を取っていることも分かっているため、卓也は攻撃に集中する。
 振るわれる一撃はヨハネの使徒の核に傷を刻み、仲間が与えたひびを更に広げる。
 繰り返された浄化師達の攻撃に、敵の攻撃は苛烈さを増す。
 自壊すら厭わない攻撃に近付くことが難しい中、アースィムは距離を取り武器でもある人形を操った。
「おれの人形が一番すごいってこと、教えてやる」
 アースィムに操られた人形は、敵の攻撃を掻い潜ると、核のある場所まで身体を伝い向かう。
 振り払おうとするがそれは叶わず、すでに刻まれていた傷を抉るような一撃を叩き込んだ。

 ヨハネの使徒の動きが鈍る。
 すでにダメージは大きいのか最初の頃のような精彩は無い。
 それでも動き続ける敵に『トウマル・ウツギ』と『グラナーダ・リラ』の攻撃が叩き込まれる。

「満たせ」
 2人はお互いの腕を掴み、高らかに魔術真名を唱える。
「先手は任せて下さい。その後は、お任せします」
 グラナーダは手にした呪符に魔力を通し活性化させると、魔術弾をヨハネの使徒の核を目掛け叩き込む。
 それにより動きが鈍った隙を逃さず、すかさずトウマルは一足一刀の間合いに踏み込んだ。
(コアは顔に当たる場所か)
 ヨハネの使徒の核を確認すると、そこを攻撃し易いよう、まずは足を潰す。
 剣撃の間合いに一歩踏み込むとクロス・ジャッジ。
 足関節に振われた2度の斬撃は十字の傷を刻む。
 刻まれた傷に自重を支えきれなくなったヨハネの使徒は、崩れるように倒れ込んだ。

 その状態でも暴れるヨハネの使徒。
 止めを刺したのは『ローザ・スターリナ』と『ジャック・ヘイリー』だった。

「残らず全部叩き潰してやる!」
 前衛として就いていたジャックが、敵を倒すべく踏み込む。
 その戦意は高く、それだけに前へと出過ぎている。
「おっさん、無茶すんなよ!」
 ローザはジャックを援護するように攻撃を放つ。
 エナジーショットを発動。
 常よりも高い魔力の込められた一撃は、ジャックを薙ぎ払おうとした前足の関節に命中。
 粉砕する。
 これによりヨハネの使徒の核は、がら空きになる。
 そこに振われるジャック渾身の一撃はヨハネの使徒の核を粉々に粉砕した。
「よし、次だ!」
 倒したことを確認すると、ジャックは即座に他のヨハネの使徒に向かう。
 1人に出来ないとばかりに後を追うローザ。
 他の手の空いた仲間達も即座に向かって行った。

 まずは1体を破壊する。
 ここで即座に残骸回収に動いたのは『薙鎖・ラスカリス』と『モニカ・モニモニカ』だった。

「運ぶ時に攻撃に巻き込まれたらいけないから、運んでる間は離れた方が良いと思う」
 モニカは引きつけ役の皆に、ヨハネの使徒の残骸を運んでいる間は離れてくれるよう提案する。

 これは倒したヨハネの使徒の残骸を、すぐに運ぶことも含めて有効な行動だ。

 今回の指令の目的は、蒸気船制作のためヨハネの使徒の残骸を確保すること。
 そのためには残骸を出来るだけ綺麗な状態で集める必要がある。
 もし戦闘の間ずっと残骸を放置していた場合は、戦いに巻き込まれ残骸が破損する可能性があった。
 更に言えば残骸が散らばった状態では戦闘の邪魔になりかねない。
 それらを防ぐためにはヨハネの使徒が倒された傍から運び出す必要があるのだ。 

「ちょっと、一度に運び過ぎよ」
 大きな残骸を縄で括り運ぼうとする薙鎖にモニカは言った。
 これに薙鎖は返す。
「でも、少しでも早く運ばないと。皆の助けに行けないから」
「そうだけど、だからってナギサが怪我したらいけないでしょ」
 2人はヨハネの使徒が向かって来る事を出来るだけ避けるため、魔術真名も口にせず運搬に集中している。
 この状況で不意打ちの一撃でも受ければ、ただでは済まない。
 それでも多くの残骸を一度に運ぼうとする薙鎖にモニカは言った。
「だったらワタシが持って行くから。貸して」
 薙鎖の持っていた一番大きな残骸を手に取ると有無を言わさず縄で括り自分が抱える。
「先に行って。後ろはワタシが見ておくから」
 2人は、いつものような掛け合いをしながら、可能な限りすばやく残骸を国境の壁の向こうへ運搬していった。 

 こうしてヨハネの使徒の残骸は破損状態が少ない状態で運ばれていく。
 欲を言えば、もう一組は戦闘直後の運搬役に就いていると更に良かったが、ヨハネの使徒の対応にそれどころではない。
 2体目のヨハネの使徒は1体目の物よりも2回りは大きな相手だったからだ。
 そんな敵相手に『トール・フォルクス』は『リコリス・ラディアータ』と共に果敢に戦っていた。

 トールは攻撃を叩き込みながらヨハネの使徒を誘導するように動いていく。
 かつての相棒を殺したヨハネの使徒は憎き仇だが、その動きは冷静だ。
(リコも皆もやらせない)
 後悔と自責の念に囚われながらも、それ以上に今度こそパートナーを守るという意志がみなぎっている。
 そんなトールの動きに誘導され、敵は向かって来る。
 そこにリコリスの攻撃が放たれる。
「神に創られた哀れなお人形さん、遠慮はしないわ」
 武器を手に、アライブスキルを使い攻撃を叩き込む。
「壊してあげる。一匹ずつ、確実にね」
 その攻撃は的確に、ヨハネの使徒の核に叩き込まれていく。
 攻撃を受けたヨハネの使徒は、トールとリコリスのどちらを先に倒すべきか迷うように動きが鈍る。
 そこに仲間の浄化師達の攻撃が続いた。

「クラリス、敵を引くよ」
 パートナーである『クラリス・ヘルツ』に呼び掛けながら『ステファニー・ヘルツ』は戦いに挑む。
(これだけ仲間が居れば大丈夫)
 ステファニーが思っているように、今この場には仲間の浄化師達が集まっている。
 自分達だけでなく仲間を集め、有利に戦いを進めヨハネの使徒を引きつけるようにして戦っていた。
「ステファニー、もう一方のヨハネの使徒との戦いは、有利に進んでいるみたいです」
 状況を把握し伝えるステファニーに、クラリスは返す。
「なら、こっちも一気に叩こうか」
 現状の有利を更に進めるべく果敢に攻めていく。
 それは他の仲間も同様だ。

「委ねよ、夜の帳に紛れし契約の名の元に」
 魔術真名を唱え『ヴァレリアーノ・アレンスキー』と『アレクサンドル・スミルノフ』は攻撃を重ねていく。
 先行するのはヴァレリアーノ。
 仲間との連携を意識しながら、敵を引きつけるようにして縦横無尽に動く。
「敵の機微が読み取れないのは厄介だな。その分、躊躇せずに倒せるが」
 動きを見極めながら動くヴァレリアーノに、ヨハネの使徒は攻撃をしようとする。
 蹴りつけようと前足を振りあげた瞬間、天空天駆で空に飛んでいたアレクサンドルの援護攻撃が叩き込まれる。
「我が汝の道を作ろう、存分に力を奮うのだよ」
 アレクサンドルの言葉通り、援護攻撃で生じた隙を逃さず、ヴァレリアーノはヨハネの使徒の懐に一気に跳び込む。
 踏み込むと同時に振り抜いた剣で、ヨハネの使徒の核に傷を与えた。

 ヨハネの使徒にダメージが刻まれていく。
 それを更に広げるように攻撃は続く。

「一人で突出しないように」
 破壊衝動に流されそうになる『ラシーファ・エルダム』にパートナーである『アルティス・ディア』は宥めるように声を掛ける。
「僕の呼吸の意味を奪うんですか?」
「いやラシーファ、それは極端すぎないかい。とにかく、衝動のままには戦わないこと」
 ヨハネの使徒の動きを見極めながらアルティスは返していく。
「1人で戦うより、皆と戦った方が効率よく倒せるって話さ」
 アルティスの言葉の正しさを示すように、仲間の浄化師達が援護に動いてくれる。
「イザークさん」
「ああ、任せてくれ」
 パートナーである『鈴理・あおい』の呼び掛けに応え『イザーク・デューラー』は敵を翻弄するように動く。
 ヨハネの使徒の懐に飛び込んだかと思えば、動きを止めるべく足に攻撃を叩き込む。
 叩き込んだ瞬間、敵は反撃をしようとするが、そこにあおいはアライブスキルを使い援護。
 動きを拘束した瞬間、イザークは天空天駆で空へと退避する。
 その間にも、あおいはヨハネの使徒と仲間の位置を把握しながら最適の場所に移動し続ける。
「あおい、まだ行けるかい?」
「はい。大丈夫です」
 力を込めて返すあおいに、イザークは苦笑するように言った。
「それは良い。だが、力が入り過ぎている。適度に力を抜かないと、続かないぞ」
「大丈夫です。自分のことは自分が一番よく分かっています」
 普段から自らを律している彼女らしく、凜とした態度で戦いを続けていく。
 そんなあおいに苦笑しながら、支えるようにイザークは戦いを進めていった。
 そうしたパートナーと共に戦うのは『杜郷・唯月』と『泉世・瞬』も同じだ。
「久々の戦い……しかも大きな……が、頑張りましょう……!」
 唯月の言葉に、瞬は熱を込めた声で返す。
「……いづが行くなら当然俺も行くよ。俺がうんと守ってあげるからね!」
 その言葉には、唯月のことを心の底から思っているのだという事が伝わってくる。
 だが同時に、言いようのない不吉さも滲んでいた。
(……瞬さん)
 戦いを中心とした指令の中、少しずつ異変を見せていく瞬に不安を覚えている唯月だが、ここしばらくの指令が終ってからは少し落ち着いている。
 今回の戦いの中で、何かが起こるという事はないだろう。
 だからこそ唯月は瞬を想い信じながら、共に戦いに挑んでいく。
 唯月はペンタクルシールドを展開しながら、ヨハネの使徒の攻撃力を一時的に下げるべくルーナープロテクションを使おうとする。
 それを防ごうとするかのように敵は突進しようとするが、そこに瞬の攻撃が叩き込まれる。
 捧身賢術により魔力攻撃力を上げ、ファイヤーボールを叩き込む。
 巨大な火球がヨハネの使徒のコアに命中すると炎で包む。
 その熱量でヨハネの使徒の核は溶けるように歪みを見せる。
 炎が消えた瞬間、唯月のルーナープロテクションが発動した。
 攻撃力が低下した絶好の好機に、ラシーファとアルティスは踏み込む。
 ラシーファがヨハネの使徒の懐に飛び込む瞬間、アルティスは援護攻撃をしヨハネの使徒の動きを鈍らせ、その隙に渾身の一撃をラシーファはヨハネの使徒の核に叩き込んだ。

 戦いは浄化師達に有利に進んでいく。
 すでに1体は倒し、もう1体も加勢があれば難なく倒せるだろう。
 だがここで、ヨハネの使徒の第2陣が戦闘圏内に入って来た。
 数は3体。
 1体は引きつけ役の所に、もう1体はヨハネの使徒を1体倒したばかりの討伐組に。
 そしてもう一体は、いま戦っている最中の討伐組の元に襲い掛かって来た。
 同時に2体。
 しかも背後からの襲撃。
 これに対処するように『黒憑・燃』と『清十寺・東』は戦っていた。

「はははっ、邪魔だ邪魔だ! とっととくたばれ!」
 燃は東と背中合わせに戦っていた。
 お互いの死角を防ぐような位置取りは戦いを有利にするが、お互いの姿を見ることは叶わない。
「これじゃ先生の姿が見えねぇじゃねぇか!」
 生死が関わる戦いの中、燃は自分のことよりも東が戦いの中で傷付く姿を見ることに執着していた。
「先生! 大丈夫かい! 傷は付いてないだろうな!」
「大丈夫だ、問題ない」
 東としては、曲がりなりにもパートナーである自分の身を気遣っているのかと、僅かに思ってしまい返した応えだが、燃は残念そうに返す。
「なんだ、まだ血も流してないのか」
「小僧! いま舌打ちしなかったか!」
 喧々諤々とやり取りを重ねながらも、2人は戦いをこなしていった。

 かくして戦いは続いていく。
 序盤は有利だった浄化師達だったが、ヨハネの使徒が次々やって来るにつれ、疲労と傷が蓄積していく。
 4体までは有利に戦いを進め、5体目を倒した所で疲労が圧し掛かって来る。
 そこから更に5体。
 引きつけ役に2体と、討伐組に3体が襲い掛かっていた。

「まだだ! 来い!」
 パンプティは前へ前へと。
 決して退くことなく攻撃を重ねていく。
「アタシはお前らなんかに、絶対負けねぇ。守る奴がいる限り、此処を通さねぇ!」
 それは決意と信頼の言葉。
 守りたい者が後ろに居る。
 頼りになる者が背中に居る。
 パンプティの思いに、リトルは応える。
「パンプティさん!」
 魔力を振り絞り回復を重ねる。
 独りではなく2人で。
 ヨハネの使徒に立ち向かっていく。
 気圧されるように、ヨハネの使徒は攻める余裕全てを潰される。

 そこに仲間の追撃が叩き込まれた。

 クリストフは、パンプティが抑えているヨハネの使徒の左側面から一気に踏み込む。
 同時に疾走するのはシリウス。右側面を目指す。
 連携を強く意識する2人は、左右の挟撃に動いた。
 前方と左右による同時攻撃。
 さすがに不利と判断し回避行動に移ろうとするが、リチェルカーレがそれを防ぐ。
 鬼門封印を使うため距離を詰めようとした所で、ヨハネの使徒は突撃体勢を取る。だが――
「リチェちゃん!」
 アリシアの攻撃が突撃の初動を潰す。
 呪符を介し発動された魔術弾を核に命中させ、一瞬動きを止める。
 その隙を逃さずリチェルカーレは鬼門封印を発動。
「シリウス!」
 僅かな呼び掛けで状況を伝えきる。
 それに応えるようにシリウスは斬撃を放つ。
 目にも止まらぬ速さで放たれた一撃は、正確に右足関節を破壊した。
 自重を支えきれず、崩れるヨハネの使徒。
 その瞬間、鋭い踏み込みと共にクリストフの一撃が核を断ち切った。
 ヨハネの使徒の1体を破壊する。 
 それを確認すると、クリストフは皆と共に仲間の浄化師達に襲い掛かっているヨハネの使徒へと向かう。
「まだやれる?」
「はい、大丈夫です」
 クリストフはアリシアに呼び掛け。
「回復を頼む。前衛は俺が出る」
「分かったわ。無理はしないでね、シリウス」
 シリウスとリチェルカーレも言葉を交わし戦いを続けていった。

 そうして戦っているのは他の浄化師達も同じだ。

「珠樹、無茶はするなよ!」
 仲間の攻撃が通り易いよう、千亞は珠樹と共に敵を翻弄するような動きを見せる。
「無茶はしません。ですが――」
 より強く踏み込むのは珠樹。
「千亞さんはお守りしますよ、ふふ……!」
 危険を千亞から遠ざけるように動いていく。
「恥ずかしいこと言うな、バカ!」
 僅かに顔を赤らめながら千亞も積極的に踏み込む。
 2人の息の合った動きを敵は捉えきれず、当たらない攻撃を続ける。

 そこに朱輝と碧希は連携して攻撃を叩き込む。

 パーフェクトステップで機動力を上げた朱輝は果敢に敵の間合いに踏み込む。
 軽やかに敵の攻撃を避けながら攻撃を叩き込む。
 しかし時には、避け切れないことも。
 けれど碧希が庇う。
「碧希君!」
「大丈夫! 朱輝は攻撃に集中して!」
 ペンタクルシールドでダメージを軽減していた碧希は、攻撃を受けると即座に反撃。
 攻撃を受け動きが鈍った敵に、すかさず朱輝は追撃を入れた。
「朱輝は俺が守るから。どんどん攻撃していこう」
「ありがとう、碧希君。でも無理はしないでね」
 2人は連携を取り攻撃を重ねていく。

 こうして攻撃を重ねていくのは他の浄化師達も同様だ。

「ルキ、一瞬で良い。動きを止めてくれ!」
「うん、わかった」
 エミリアの指示に従い、ルカスは絡縛糸を使う。
 敵の動きを拘束できたのは一瞬。
 だが、その隙を逃さずエミリアは攻撃を叩き込む。
「この調子で行くぞ、ルキ!」
「うん、がんばる」
 ルキの支援を活かしながら、エミリアは攻撃を重ねていった。

「おやつのために、頑張る二ャー!」
 サザーキアは、ツバキの動きに合わせ攻撃を重ねていく。
 それは時に守るような動きも見せる。
(いざとなったらツバキを守らなきゃいけないし、攻撃にも合わせなきゃいけないし、中々大変だニャー。でもおやつのためニャ!)
 2人は息の合った動きを見せ、連携攻撃を叩き込む。
「サザー!」
 ツバキが敵の攻撃にカウンターを合わせた瞬間、間髪入れずサザーキアの連撃が入る。
「おやつ割増二ャー!」
 叩き込まれた二身撃は核に大きくひびを入れた。

 攻撃を重ねる浄化師達。
 だが、ダメージも蓄積している。
 その回復に、ひろのが動く。

「ルシエロさん、回復に動きたいので援護をお願いします」
「分かった!」
 ひろのが傷が深そうな仲間の見極めをしている間、ルシエロは敵の攻撃全てを受け止めるように前に出る。
「ここは通さん!」
 敵の動きを止め翻弄するように攻撃を重ねていくルシエロ。
 その間に、ひろのは回復に動く。
「回復します。傷の深い方は来て下さい」
 ダメージが低い者はルシエロと共に敵の動きを止め、そのお蔭で回復は順調に進んだ。

 回復により前線は維持され、攻撃に集中する事で止めを刺していく。

「響、援護しろ!」
 仲間の攻撃で動きが鈍った敵の止めを刺すべく、愛華は真っ直ぐに踏み込む。
「無茶はしないで下さいよ、お嬢」
 響は愛華を援護するため狙いを付ける。
 狙いは核。
 ワーニングショットで威力を高めた一撃は、狙い過たず核に命中。
 突き刺さり、大きくひびを入れる。
 そこに間髪入れず愛華の攻撃が入る。
 響の攻撃で入ったひびに重なるように加えられた一撃は、核を粉々に砕いた。
 これで引きつけ役に攻撃していた敵は居なくなる。
「響、他の援護に向かうぞ。これ以上壁に近づけさせるな」
「分かりました、お嬢」
 他の引きつけ役の仲間と共に、討伐組の援護に動く2人。

 倒された敵の残骸が散らばる中、それを薙鎖とモニカの2人は懸命に運んでいく。

「ナギサ、大丈夫? 疲れてない?」
「大丈夫。それよりも速く全部運んで、皆を助けに行かないと」
「だからって無理して良いって訳じゃないでしょ。ほら、そっちの大きいのも貸して」
 残骸の運搬に集中する2人だが、この御蔭で質の良い残骸を傷をつけずに確保することが出来ている。
 これが出来ていなければ、確実に残骸は戦いの余波で傷を受けていた上に、戦いの邪魔になっていたので、今ほど浄化師達がスムーズに敵を倒せることはなかっただろう。
 しかし運搬に集中しているのが2人だけのため負担は大きい。
 休みなく走り続け疲労もかなり溜まっていた。
 それでも2人は懸命に運搬を続ける。

 戦いが続く中、残りは討伐組が戦っている3体のみ。
 それも浄化師達の攻撃により倒されていく。

 周囲を囲む形で襲い掛かってくるヨハネの使徒。
 対峙している討伐組は、傷を負う者も居る。

「血を流して戦う先生の姿! 最高だ。早く絵にしたい。テメェらは邪魔だ、さっさと死ね! 俺はスケッチを描かなくちゃならないんだからよぉ」
 傷を受け血を流す東に、興奮した声を上げる燃。
「……」
 心の底から東はドン引きだったが、魑魅魍魎の壁を展開し、前へと出る燃の援護に動く。
「待っててくれ先生!」
「……」
 掛ける言葉もなく、戦いを続ける東だった。

 囲まれ不利な状況を崩すべく、支援と連携を強く意識して動く者達も。

「ちょっとキツくなってきたね」
 ステファニーは状況を判断し言った。
「クラリス、敵を引くよ」
 周囲を囲む3体の内、1体を引きつけるように動く。
 一気に懐に飛び込むと攻撃を加え、注意を引いた所で誘導する。
 そこに敵の攻撃が放たれようとするが、クラリスが横合いから攻撃。
 敵の動きを一瞬止めたあと、ステファニーと合流し敵の誘導に動く。
「ステファニー怪我はありませんか?」
「大丈夫よ」
 2人は誘導に成功し、敵の1体を孤立化させる。

 そこに仲間の連携が重なる。

「あおい、先に行くよ」
 イザークは軽快な踏み込みで敵の懐に飛び込む。
 敵の攻撃を避けながら、攻撃を繰り返す。
 時折、敵の攻撃に当たりそうになるが、あおいの援護により躱していく。
 人形を操り、敵が攻撃をするべく振り上げた足を拘束する。
「今です、イザークさん」
 あおいの声に応え、イザークは更に踏み込み核へと攻撃を叩き込む。
 敵は反撃をしようとするが、その時には天空天駆を使い退避していた。

 そこに続けて攻撃が加えられる。

「リア、気を付けて」
 心配そうなエレノラの声を背に受けながら、リアは積極的に踏み込む。
「こっちだこっち!」
 打撃を加えては距離を取る戦い方を繰り返す。
 敵の攻撃をギリギリで避けていくが、避け切れそうにない時も。
 そこにエレノラが攻撃し、逃げ切る隙を作る。
「危ないから無茶をしちゃいけないよ」
「大丈夫だって!」
 明るく応え、リアは攻撃を続ける。

 そこに攻め込むタイミングを計っていたラシーファが一気に踏み込んだ。

 ラシーファは敵の攻撃を掻い潜り、核を狙う。
 破壊の意志を込め、武器を振りかぶる。
 渾身の一撃は、勢い良く核に叩き込まれた。
 大きくひびが入るほど、その一撃は打撃を与える。
 それほどの力を込めた一撃は、放った後に隙を生じさせた。
 敵はそれを逃さず反撃を放とうとし、アルティスが邪魔をする。
「ラシファ!」
 鋭く声を掛けながら、突進しようとした敵の核に攻撃。
 僅かに敵は動きが鈍る。
 その隙にラシーファは紙一重で回避すると、アルティスの傍に戻る。
「助かりました」
 少し硬い口調で礼を言うラシーファに、苦笑するアルティスだった。

 繰り返された攻撃に弱る敵。
 そこに唯月と瞬が止めを刺しに行く。

「いづに近付くな!」
 唯月の脅威となる敵に、瞬は積極的に前に出て戦っていく。
 それは本来なら、ある程度距離を取って戦うべき彼のスタイルからすれば前に出過ぎている。
 唯月には何一つ危険なことは近づけさせない。
 そう体全体で表しているかのような戦い方だった。
「瞬さん、前に出過ぎです!」
 唯月は言葉で止めようとするが瞬は止まらない。
 だからこそ、全力で援護に回る。
 ペンタクルシールドを張り積極的に前に出ながら、ルーナープロテクションで攻撃力を低下させる。
 そこに瞬は踏み込む。
 防御を捨て攻撃だけに集中し、渾身の魔力を込めたファイヤーボールを叩き込んだ
 それは核に命中。
 仲間の攻撃で脆くなった核は、高熱で弾けるように粉砕された。

 これで残りは2体。
 それも果敢に戦う浄化師達により破壊されていく。

 卓也は魑魅魍魎の壁を使い、敵の攻撃を受け止める壁役として動く。
「どうした、こっちだこっち!」
 敵の注意を引くようにわざと声を上げ、翻弄するように動く。
 そして少しずつ少しずつ、敵を攻撃し易い所に誘い出した所で、アースィムが攻撃した。
「ばぁか、そっちは囮だよ。本命は……こっち!」
 アースィムの操る人形は、卓也に気を取られた敵の間合いに潜り込むと、滑らかな動きで核まで辿り着き攻撃を叩き込む。

 敵に確実にダメージを与えつつ、傷を受ける者も。
 それを癒すために、グラナーダは動く。

「回復に動こうと思うのですが、ヨハネの使徒を引き付けて貰えますか?」
「分かった。なら先に俺が前に出るから、その後に動いてくれ」
 トウマルはグラナーダの動きを援護するべく、積極的に前に出る。
 踏み込むと核を目掛けて剣撃を叩き込み、グラナーダから引き離すように動く。
 その間に、グラナーダは天恩天賜を使い回復。
 これにより前線が維持される。
「トーマ」
 グラナーダの呼び掛けに、攻撃を続けていたトウマルは敵から距離を取り、連続した戦闘で疲労した身体を一時休める。

 攻撃と回復のバランスを取りながら浄化師達は攻撃を続けていく。

「アーカシャ、少しで良い。動きを止められるか?」
「少しなら、大丈夫だよ」
 アーカシャに支援を頼み、ヴァンは間合いを詰める。
 敵は反射的に攻撃をしようとするが、それをアーカシャの人形が拘束する。
 その好機を逃さず、渾身力を込めた一撃を核に叩き付けた。
 苛烈な一撃は敵をのけぞらせるほどの衝撃を与える。
 その瞬間には、すでにヴァンは横に飛び退き距離を取っている。
 仲間の追撃が入り易くするためだ。

 シュリとロウハは、息の合った連携を見せた。
 共に踏み込むと、敵の攻撃を同時に避ける。
 敵がどちらを狙うべきか迷うほどの動きを見せ、即座に攻撃に移る。
(ロウハは、わたしが守るわ)
 シュリはペンタクルシールドを張り距離を詰めると、ルーナープロテクションで敵の攻撃力を落とす。
 更に敵を引き付けるべく、あえて攻撃範囲に留まる。
 攻撃をするべく足を振り上げる敵に、天空天駆で飛び上がったロウハが渾身の一撃を振り降ろす。
(お嬢は、俺が守る)
 閃光の如き速さで振るわれたソードバニッシュは核を切り砕いた。

 これで残りは1体。
 そちらはヨハネの使徒に禍根を持つラニとラスが苛烈な戦いを続けていた。

「……ガラクタにしてやる」
「いい加減ぶっ壊れろ!!」
 憎き仇であるヨハネの使徒を前にして、出来る限り冷静であろうとした2人だが、戦いが続く中では難しい。
 2人ともが前へ前へと踏み出し、一撃一撃に渾身の力を込め攻撃を叩き込む。
 防御を捨てたかのような攻撃は、ヨハネの使徒に傷を刻んでいく。
 同時に、2人ともダメージを重ねていた。
 それでも止まらず攻撃を続ける2人。
 だが、その中で気付く。
 パートナーが傷付いている事に。
「……ラニ」
 憎悪をパートナーとの絆が食い止める。
 ラスの言葉に、ラニは視線を向け、パートナーが傷付いている事に気付いた。
「少し下がろう。回復しないと」
「……分かった」
 自分のためではなくパートナーのために、2人は回復に動けた。

 そして浄化師達の攻撃は続いていく。

「相棒の仇だ、コイツも食らっとけ!」
 ヨハネの使徒の核めがけ、トールの攻撃が叩き込まれる。
 一撃毎にひびを入れ、攻撃すると即座に動く。
 それはパートナーであるリコリスに攻撃が集中しないようにするため。
 トールの援護のお蔭で、余裕を持って攻撃が出来る。
「いい加減、壊れなさい」
 しぶとく耐え続ける敵に、側面から一気に踏み込む。
 軽快な足さばきで間合いを詰めると、鋭い一撃を放つ。
 核に傷を与えられた敵は、暴れるように身体を動かすが、その時には安全圏に移動している。
 パートナーとの連携をこなしながら、2人は戦っていった。

 ヨハネの使徒の核に、次々に傷が加えられていく。
 それを決定的な物にするため、浄化師達は残りの力を振り絞った。

 ローザは敵との位置に気を付けながら、魔力の残りを込めたエナジーショットを放つ。
 それは敵の右足関節部分に命中。
 関節部分を破壊された敵は、自重を支えきれずに動きが鈍った。
 そこに間髪入れずジャックの一撃が入る。
 ローザの与えた傷を更に深くする一撃は、敵の機動力を完全に奪った。

 そこにアレクサンドルとヴァレリアーノが連撃で止めを刺す。

「永遠に眠れ」
 アレクサンドルはヨハネの使徒の核を目掛け、ブロンズボウを連射する。
 繰り返される攻撃に細かなひびが広がり、止めの時が近付く。
 終わりをもたらすため、ヴァレリアーノは敵の間合いに踏み込む。
 暴れるヨハネの使徒の攻撃を掻い潜り、核の前へと到達。
 踏み込みの勢いも込めた一撃は、ヨハネの使徒の核を粉々に切り砕いた。
「最後まで、何も読み取れなかったか」
 厄介だと思いつつも、そのお蔭で躊躇なく倒すことが出来、複雑な気持ちを抱きながらヴァレリアーノは戦いを終わらせた。

 戦闘終了後、残った残骸を皆で確保に動く。
 そんな中、ジャックは口惜しそうに言った。

「まだ戦えるんだがな」
 少しでも多くのヨハネの使徒を刈り取ろうとするジャックに、ローザは諫めるように言った。
「欲張りすぎは身を滅ぼすぞ、おっさん」
 これにジャックは、疲労と傷の見えるローザを見詰めたあと言った。
「全部ぶっ潰してぇ所だが……チッ、引き時か」
 息を抜くように言うと、残骸集めに協力した。

 こうしてヨハネの使徒討伐は終わる。
 かなり傷の多い者も居たが、誰一人として倒れる者はなく、戦いを終わらすことが出来た。
 そして浄化師達のお蔭で、傷の少ない残骸を大量に確保することが出来ている。
 これがきっと、新たなる活動のための源泉になるに違いない。
 そう思える浄化師達の活躍だった。




 成功判定 : 成功

ヨハネの使徒討伐
(執筆:春夏秋冬GM)