【日常サンプル】 4月1日から5月31日までの長い期間開催されるイースター(復活祭) 復活を記念したお祭りですが、漸く訪れた春を祝うお祭りでもあるのですよ。
「第2の人生を末永く謳歌しますように」 そう願うのは『オスター・フラーデン』と呼ばれる、1人のアンデットです。 彼は少し変わった人生を持ち、親は知らぬが『ミュラーの木』から産まれたと言われ、人々から春を呼ぶ男神として、小さな村の神殿で大切にされていました。 ですが、平穏な日々はオスターが21歳になった時に、突如として消え去ったのです。 叛神論者たちがオスターの住む村を襲い、神論の奥深くに隠れていたオスターを見つけ出し、彼を悪しき神を名乗る者として処断してしまいました。
――と、ここまでは数は多くはないけれども、この世界ではよくある話の1つ。 オスターの本当の数奇な運命は、ここから始まったのです。 死んだと思ったオスターが、次に目を覚ましたのは、見渡す限り花が咲き乱れた草原。そしてその中心には1人のきらびやかな女性が佇んでいました。 その女性が言います。 「神々である我が、オスターそなたを見初めたのじゃ」 そう、叛神論者を使いオスターを死に追いやったのは、冥界と春の女神であるプロセルピナでした。 「た、例え女神であろうと、私はあなたに従う気はありません」 「では、その気になるまで死者として地上をさ迷うことになろう。絶対にそなたを逃す気はないぞオスター、100年でも1000年でも待とうではないか」 「それでも私の気持ちは変わることはないでしょう」 「好きにすればよい、時は無限じゃ」 プロセルピナがそう言った途端、オスターの居る場所に真っ黒な穴が開き、オスターの体は穴の中に吸い込まれて行きました。
――それがオスターの半生。 アンデットとして地上に戻ったオスターは、歳を取る事もなく、そして変わらぬ姿を怪しまれないように、彼方此方を放浪して歩き、自身もどれくらいの年月をさ迷ったか分からないほどに、世界中を旅しました。 そして放浪の末にたどり着いたのは、かつてオスターが住んでいた村の近く。 今は街になり昔の面影は殆どありませんが、唯一朽ち果てたとはいえ神殿だけは残っていたのです。 その場に留まり、イースターの季節にだけ街に出ては『実に復活』と、人々に春の訪れの声をかけるのが、オスターの数少ない楽しみ。 今日もまた小さな子供に声をかけ、その美しい姿で笑いかける姿が人々の目に留まります。 いつの頃からか、オスターのことが風の噂になり『アネモネの使い』と称されるようになったのです……昔話ですね。 ――いいえ、オスターはあなたの近くに居るのかも知れませんよ?
【戦闘サンプル】 「僕が突入するから、ミューは後方に」 そう言うのは、東邦の剣士である『響新(ひびき あらた)』。 そしてミューと呼ばれたのは、兎耳族の魔法使い『ミュー・リンリン』。 「せめて身体強化の魔法を……。『エナジーバーニング……アースプロテクト……クイックターン』」 次々と響に魔法をかけるミュー。響は接近戦型なので、必然的にかけ合わせる魔法は、防御や俊敏性が多くなることを、ミューは知っている。 「ありがとう。後は後方支援でね。僕は突っ込むよ」 「はい。範囲魔法と回復は任せて下さい」 ミューとは距離を取り、響は盗賊のアジトの中を窺うが、盗賊たちは襲われることはないと思っているのか、酒を酌み交わし緊張感などまるでない。 (5?いや6人だけど、これだけ気が抜けていれば、素早い対応なんて無理。早く片付けて、ミューとご飯にしよ) スラリと引き抜くのは、響が東邦から持って来た愛刀『一乃太刀』。東邦では刀は珍しい物ではないが、この地域では先ずお目にかかれない代物。 その一乃太刀を正面に構え、響は盗賊のアジトの扉を蹴り破った! 「悪いけどさ、褒賞金の為にやられてよ」 一方的な言い分だとは思うが、その気十分の響は止まらない。 「はぁぁぁー!」 上がった俊敏を生かした高速移動で、一番手前に座っていた盗賊を、左から右への袈裟斬り。 「こいつ、強いぞ!」 「誰も逃がさないよ」 斬った勢いで下に向いた刃をきり返すような斬り上げを繰り出した後、少し離れた盗賊へと間合いを積め、胸を一閃する払いで、盗賊を一撃。 「響さん!」 「!!」 ミューのテレパス能力で、響の頭に直接声が聞こえた瞬間に飛び引けば、ミューの遠距離魔法、ファイアーブラストが二人固まっていた盗賊を包むように、煉獄の高い炎を上げた。 「残り一人!」 一番奥に要るのは、この盗賊たちを束ねる頭領だろう。手前の盗賊を相手にしている内に剣を持ったが、響には遅いとさえ感じてしまう。 「これで……終わり!!」 飛びかかるような瞬発力で、一乃太刀を真っ直ぐに構えながら盗賊に直撃。 勢いと手入れされ抜かれた一乃太刀は、頭領の体を深々と貫いた。 「き、貴様……賞金稼ぎの……ぐはっ」 「賞金稼ぎの響&ミュー、覚えておいて……って、もう無理かあー」 突入から制圧まで5分弱。でもこれが響とミューの生業。 そう、二人は名うての賞金稼ぎである。 こんなのは日常で、響は「さあ褒賞金でミューとご飯にしよう」と、にこやかに笑っていた。
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