《悲嘆の先導者》フォー・トゥーナ Lv 41 女性 ヒューマン / 墓守


司令部は、国民から寄せられた依頼や、教団からの命令を、指令として発令してるよ。
基本的には、エクソシストの自由に指令を選んで問題無いから、好きな指令を受けると良いかな。
けど、選んだからには、戦闘はもちろん遊びでも真剣に。良い報告を待ってる。
時々、緊急指令が発令されることもあるから、教団の情報は見逃さないようにね。


【教国】幽霊屋敷に集まる悪霊を排除しよう
普通|すべて

帰還 2020-07-30

参加人数 6/8人 春夏秋冬 GM
 エトワールにある、とあるお屋敷。  そこは周囲から『幽霊屋敷』と呼ばれていた。  古くていかにも幽霊が出そうな屋敷だから、ではない。  長年仕えている家令や侍女が手入れをしているので、歴史は感じられるが立派な屋敷である。  なのに何故『幽霊屋敷』と呼ばれるのかと言えば、それは簡単。  実際に居るのだ。幽霊が。  彼の名前は、御剣・水月(ミツルギ・スイゲツ)。  約100年ほど前にニホンから魔術の勉強に来て、そのまま定住した陰陽師であり、死の間際に禁術を使うことで意図的に幽霊になった人物。  死ぬ前に自分の魔力と霊媒能力、残り寿命全てを使って、禁術を使い自分の魂が肉体から出ても屋敷の外へ出て行かない様に屋敷に魂を定着させ、屋敷にとり憑いて居座っているのだ。  しかも彼の禁術の影響で、ミツルギに連なる者の魂は屋敷で死亡した場合に限り、現世に未練があるほど居残り易くなってしまっている。  そのせいで、この屋敷の家長である人物、モチヅキ・ミツルギの亡き妻であるレティシア・ミツルギも、幽霊として屋敷に残っている状況。  もっとも彼女は幽霊になってまだ日が浅いので、水月のように自由に、生者に自分の姿を見せたり見せなかったりは出来ない。  そんな幽霊屋敷に、異変が起こっていた。 「あー、これ拙いねー」 「拙いなんてもんじゃないですよー!」  暢気な水月に、魔女のアマンダが半泣きで返す。 「悪霊だらけじゃないですかー!」  アマンダの言う通り、今お屋敷は悪霊だらけになっていた。  何故こんなことになっているかと言えば、それはアレイスターの造り出した国土魔方陣が関係している。  神殺しを目論むアレイスターは、創造神であるネームレス・ワンに影響を与えられるようにするため、アークソサエティ全土に国土魔方陣と呼ばれる、超巨大な魔方陣を造っている。  それはラグナロクにより殺された、創造神に対して強い憎しみを持つ無数の魂を基盤にしている。  しかも造られた後も、追加で無数の魂を注ぎこみ、今では数十万の魂が蠢く代物になっていた。  その国土魔方陣の回路の上に、たまたま建っていたのが今いるお屋敷。  それだけならどうということは無かったのだが、水月が使った禁術が拙かった。  相互干渉してしまい、今ではごく一部であるが、お屋敷そのものと国土魔方陣が繋がってしまっているのだ。  そして今、国土魔方陣が活性化しているらしく、その影響で悪霊が集まってきていた。 「今はまだ良いですけど、このまま放置してたら拙いですよー」  アマンダは、いま霊体なので宙をふわふわ浮きながらテンパっていた。  彼女は、浄化師達の家族の護衛に就いている1人なのだが、魔法により肉体から魂を一時的に切り離し霊体になれる。  それを活かし、水月ともコンタクトを取って事情を話していたのだ。 「うう、とにかくどうにかしないと」  慌てるアマンダは、自分だけではどうにもできないと考え、教団本部に連絡した。  これを受け、室長ヨセフはメフィストをとっ捕まえ、どうにかするように指示。  指示を受けたメフィストは、屋敷が国土魔方陣と繋がっていることを利用して、国土魔方陣に干渉できるセキュリティホールを作りたいと提案した。  それを成功させるべく、ヨセフは動いた。  まずは屋敷の家長である、魔術学院で教鞭をとっているモチヅキ・ミツルギを招集。  事情を話し協力を要請。  モチヅキが承諾した後、家族にも伝わることを考慮し、モチヅキの娘であるサクヤ・ミツルギやサヨ・ミツルギ、そして屋敷の使用人であるジェラルド・ベイルとテレーズ・ルルーシュにも事情を話した。  当然、秘密にすることを約束させてからである。  そうした根回しが全て終わったあと、指令が出されました。  内容は、国土魔方陣と繋がっている屋敷に訪れ、悪霊を排除して欲しいとの事です。  屋敷でメフィストは、国土魔方陣に干渉できるようにする儀式を行うとの事ですが、悪霊が多いと作業の邪魔になるのでどうにかして欲しいとの事です。  悪霊は屋敷の外と内に居るようで、排除できれば出来るほど、メフィストの儀式が成功する可能性は高くなるとのこと。  悪霊の排除に関しては、同行する操魂の魔女アマンダが、幽霊に干渉できるようになる魔法を掛けてくれます。  この指令を受けたアナタ達は――?
【日国】狐の八百万の神を助け出せ!
普通|すべて

帰還 2020-07-26

参加人数 7/8人 春夏秋冬 GM
 東方島国ニホン、トウホク地方。  以前この地域は、治安が乱れ不穏な空気が漂っていた。  ヨハネの使徒やべリアルの襲撃。  荒廃する土地と失われる命。  安寧乱れる中、助けは無く。  国の統治機構である幕府は、自分達の周囲を維持する力しかなく、地方を切り捨てることで保身を図っていた。  それにより反政府活動の起り火が地方を中心に燻り始め、やがてそれはひとつの大きなうねりとなり、国を焼く大火へと変わる可能性を持っていた。  それを影から扇動しようとする者達が居た。  アークソサエティの実質的支配者である枢機卿だ。  彼らは、いずれ来たる創造神との決戦のため、自分達の国に戦火が飛び火せず、防波堤の盾とするため。  そして、創造神の元へと至る『希望の塔』に近いニホンを前線基地とするため、植民地化計画を立てていた。  使い潰し、国とそこに生きるすべての生物が死に絶えようとも構わない。  そう思っている彼らは、ニホンの騒乱を利用することを考えた。  幕府に対する不平不満を煽り、浪人や無宿人を暴徒として組織し、かつてこの国に起った禁忌を再現するために、都のひとつを丸ごと焼き払う計画を立てていた。  それを実現するべく、枢機卿のひとつであるグラバー家が一族の者を派遣し、終焉の夜明け団すら動かし暗躍していた。  しかしその計画は、いまや大きく破綻していた。 「よう、景気の悪い顔してやがんな」 「道満殿……」  突然の来訪者に、ケイネス・グラバーは苦い顔をした。 「おいおい、そんな顔すんなよ。ビジネスパートナーだろう?」  親しげに肩に腕を回す芦屋道満に、ケイネスは怖気を飲み込む。 (汚らしいデモンが)  蔑みの声を寸前で堪える。  人間至上主義者(ヒューマニスト)である彼にとって、鬼とヒューマンが交わることで発生した半鬼など、人類史の汚点以外の何物でもない。  しかし今、目の前の相手、芦屋道満の機嫌を損ねるのは得策ではない。なぜなら―― 「だぁいぶ、切羽詰まってるみたいじゃねぇか」  ギタリと笑みを浮かべ、ケイネス達の事情を理解している道満は言った。 「反政府活動の起点とするつもだったテロは浄化師に防がれて、トウホクの情勢不安につけこんで煽ろうとしたら、冒険者ギルドだの万物学園だの出来ちまってよぉ。駒として使うつもりだった浪人やらは、向こうに吸収されちまった」 「……」  何も返せないケイネスに、道満は続ける。 「トウホクの方が落ち付いちまったから、西のヤツらも及び腰になっちまったんだろう?」 「それはっ……アイツらが、どこからかトウホクの情勢を手に入れたからで――」  憤るケイネスに、道満は心の中で呟く。 (刑部の爺さん、巧くやってくれたみたいだな。ありがてぇ)  道満は、『前世』の知り合いである狸の妖怪、隠神刑部に心の中で礼を言う。  しかし表情には欠片も出さず続けた。 「問題は、それだけじゃねぇよなぁ。幕府直轄地を治める真神武士団、だっけか? そこのお家騒動に付け込んで操ろうとしたら、その前に解決しちまったんだってなぁ? 大変だなぁ」  けらけらと道満は笑うと、囁くように言った。 「これで使える駒は、そっちが元々用意してた本国からの紐付きと、現地調達した俺らだけってわけだ。大切にしなきゃいけねぇよなぁ?」 「何が言いたいんです」  にやりと好色そうな笑みを浮かべ、道満は応えた。 「俺は大切な駒なんだからよぅ、労ってくれってこったよ。だからさぁ、そっちが捕まえてる狐の八百万の女、味見させてくれよ」 「まだそんなこと言ってるんですか」 「おう、そりゃ言うさ」  好色そうな笑みを浮かべたまま道満は続ける。 「前にも言ったじゃねぇか? 八百万とはヤったことねぇんだよ。どうせアシッドに感染させてべリアルにしちまうんだろ? その前に、ヤらせてくれたっていいじゃねぇか」 「それは……」 「ふ~ん、嫌なのかい。あ~、それじゃ、やる気なくなるよな~」 「なにを言ってるんです。今さら、私達から離れるとでも――」 「その気になりゃ、できるぜぇ」  外堀を埋めるように道満は言った。 「俺が何で、トウホクの方で親分面してたと思う? お前らに良い目を見せてやるためじゃねぇよ。何かあったら、逃げ込める保険のためだよ」 「……っ」  言葉を無くすケイネスに、道満はあやすような声で言った。 「そんな顔すんなよ。俺としちゃ、こんなしみったれた国なんぞより、そっちの国で面白おかしく楽しみてぇんだよ。ひひっ、他の国の女とヤったことねぇからよ、楽しみだ」  けらけらと笑う道満に、ケイネスは危機感を覚える。 (こいつは、いざとなれば、こちらを裏切る)  だが同時に、色と欲に弱いのは確かだ。そう思えるほど、多くの女達をはべらせているのは見ている。  今までの関わりの中でケイネスは、そう思わされていた。だからこそ―― (どのみち、こいつは使い潰す気だが、今は拙い。汚らしい混ざりモノが。獣に欲情して気持ちの悪い。そんなに望むなら、好きにすればいい) 「分かりました」  苦虫を潰すような表情でケイネスは言った。 「案内します。好きにして下さい。ただ、死んではべリアルに出来ませんから、死なない程度に遊んでください」 「はははっ、分かった分かった」 (殺すぞテメェ)  道満は『娘』に対する物言いに、内心の憤怒を飲み込み、続けて言った。 「それじゃ、早速案内してくれよ」 「は? 今からですか?」 「おう。思い立ったが吉日ってな。それによ、最近は浄化師共の動きがうるさくてな。大分嗅ぎまわってるみてぇだぞ」 「それは、本当ですか?」 「たりめぇだろ。前にテロしようとした神社があっただろ? アレを防いだヤツラが嗅ぎまわってるみたいでな。お前らが捕まえてる八百万のことも、感づいてるみたいだぞ」 「まさか、そんな……」 「あ~、やっぱ気付いてなかったのか。俺が八百万に会わせろってのはよぉ、ヤりてぇのが一番だが、逃げられないようにしてぇからだよ。襲撃されてもどうにでも出来るよう、場合によっちゃ、こっちの手駒を貸してやる。そのためにも現地に行かないとな」 「……そうですか。分かりました。そういう理由もあるなら、会わせましょう。ただ、今日はダメです。いずれ日を改めて」 「えー、なんでだよー」  ごねるように言いながら、道満は心の中で思う。 (予想通りだな)  ケイネスの性格を感じていた道満は思う。 (こいつは小心者だからな。俺に言われて警備を増強するつもりだな。お蔭で、その間に浄化師に助けを頼む時間が出来る)  笑みを浮かべたまま、道満は目まぐるしく頭の中で思考していた。  それから数日後。ひとつの指令が出されました。  内容は次の通りです。  捕縛されている狐の八百万の神『葛葉』の救出。  そこに向かう道満を、同行するケイネスの前で襲撃すること。  道満を襲撃するのは、テロ組織に潜入している道満が怪しまれないようにするためです。  本気で敵対しているように見えるよう、演技して欲しいとの事でした。  この指令に、アナタ達は――?
【機国】守護天使ジェロニモに勝利せよ!
難しい|すべて

帰還 2020-07-20

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 機械都市マーデナクキス。  マドールチェ達により建国された、文字通りの機械都市だ。  高度に発達した科学を基盤に、アークソサエティよりも洗練された機械技術を持っている。  ある意味、人間の力を象徴するような都市国家でもある。  しかし、マーデナクキスが存在するヨトゥンヘイム地方全体から見れば、ごく狭い場所でしかない。  マーデナクキスがあるヨトゥンヘイム南部は、比較的穏やかな自然があり、人が生きるには適している。  だがそれ以外、特に最北端は火山地帯があるなど、自然の厳しい場所もあった。  そのひとつ。『塩の地平(ソルト・ホライズン)』に、ヨトゥンヘイム全域の守護天使、塩の王ジェロニモは居た。 ◆  ◆  ◆  見渡す限り、漂白された世界。  高純度の塩で覆われた地平に、ジェロニモは立っていた。  1人では、無い。隣接する地域を担当する守護天使、毒の王カチーナと相対していた。 「俺にも、人に手を貸せと?」 「そうだ」  カチーナの応えに、ジェロニモは眉を寄せる。 「本気か?」 「そうだ」  先ほどと変わらぬ、ゆるぎなき応え。  それを受け、ジェロニモは問うた。 「なぜ、あのような者共を助けねばならぬ。勝手に死んでくれた方がせいせいする」  ジェロニモが言っているのは、機械都市マーデナクキスの住人のことだ。 「死に掛けを助けてやった恩も忘れ、ただただ貪るしか出来ぬ者共を、なぜ助けねばならぬ」 「未来に繋がるからだ」  カチーナの言葉を、ジェロニモは鼻で笑った。 「未来だと? 囀るな。あのような未来を紡ぐような奴らの末路など知ったことか」  実感を伴うジェロニモの言葉に、カチーナは気付いた。 「ジェロニモ、お前、未来を予測したな」 「したが、それがどうした」  背の羽をバサリと羽ばたかせ、ジェロニモは応える。  純白である筈の羽は、僅かではあるがその先が暗黒に染まっていた。  それは守護天使であるジェロニモが、死告天使へと変わりつつあることを示していた。 「馬鹿なことを」  諭すようにカチーナは言った。 「我らは『守る』ことに専念するからこそ、守護天使でいられるのだ。人を裁くことを考えれば、死を与える死告天使になってしまうぞ」  そう言うと、落ち着くような間を空けて続ける。 「そもそも未来予測は、『必ずそうなる』訳ではない。前提条件次第で変わる」 「そうだ。だが、前提となる条件が変わらぬ限り、ほぼ確実に実現する。お前も、この国の未来を、何もせず進んだ先の未来を予測するがいい。私と同じになるだろう」  ジェロニモは自分が見た未来を口にする。 「取るに足らぬ種族の差異で序列を決め、生まれ育ちで踏みにじる。この国に、元から住んでいる者達を、あいつらがどうするか想像できるか?」  唾棄するようにジェロニモは言った。 「滅べば良いとしか、思えなかった。貪るしか能がない分際で霊長を語り、八百万の神々すら、誰かを殺すための兵器に変えた。そんなことしか出来ぬ者達など――」 「それを予測したのは、いつだ?」  なにか確信を持って告げるカチーナに、ジェロニモは応えた。 「2年前だ。それがどうした」 「ならばもう一度、未来予測を『視て』みろ」 「……」  ため息をつくような間を空けて、ジェロニモは未来を予測する。  それは創造神より与えられた『全知』により、ヨトゥンヘイム地方全域を知り、それに基づいて『全能』を用い行う演算。  創造神に比べれば、欠片にも満たぬ力ではあるが、ヨトゥンヘイム地方に限れば、ほぼ未来予知に近い。  現在に基づく未来予測を行ったジェロニモは、それを知ると同時に驚愕した。 「……どういう、ことだ」 「未来は変わったか?」  カチーナの問いに、ジェロニモは驚きを湛えたまま応えた。 「変わっている。だが、何故だ……これは――」 「変わったというのなら、他の地域から来た者達の行動による物だろう」 「浄化師が、未来を変えたと……? 馬鹿な。あのような、とるに足らぬ力しか持たぬ者達が……」 「だからこそだ」  カチーナは断言するように言った。 「力ある者は、力がある故に、運命を変えることが出来ん。下手に動けば、運命の流れを加速させてしまうほど影響力を持つからだ。だからこそ、蝶の羽ばたきの如き微小の力しか持たぬ者達のみが、時に運命を変え得る」 「バタフライエフェクトか……」  考え込むジェロニモに、カチーナは提案した。 「浄化師達と戦え、ジェロニモ。かつて人であった頃、私と刃を交わした時のように。今のお前の憂いを晴らして貰え」 「……それが叶ったのなら、力を貸してやれ、と」 「そうだ。今、ヨトゥンヘイムには、最優のべリアルのひとりが居る。あれを倒すためにも、私とお前、そして八百万の神々の助力がなければ叶わぬ」 「……よかろう。連れて来い、カチーナ。我が古き友よ。貴様と同じく、刃を交わし友と成れるか、見せて貰おう」  ジェロニモは、人であった時と同じ、戦士の目をして言ったのだった。  その数日後。  ヨトゥンヘイム地方の守護天使、塩の王ジェロニモとの戦闘指令が出されました。  ジェロニモは基本『不死』ですが、一定以上のダメージを与えることが出来れば、敗北を認め力を貸してくれるようになるとの事です。  また、戦いの際は結界を張ることで『どれだけ傷を負ったとしても解除後は元通りになる』ようにしてくれるとの事です。  ただし、一切躊躇なく攻撃してくるとの事でした。  この指令に、アナタ達は、どうしますか?
ドッペルと夏ライフ
とても簡単|すべて

帰還 2020-07-20

参加人数 7/8人 留菜マナ GM
 穏やかな細波が、薄く光る月の下で優しく響いていた。  水平線の向こうには、黄色い月がぼんやりと浮かび上がっていて幻想的な雰囲気を醸し出している。 「明日は、ドッペル達を海に連れて行けそうだな」 「そうね。ドッペル達、海水浴は初めてみたいだから大丈夫かな」 「まずは、泳ぐ練習をしないといけないかもな」  あなたとパートナーは談笑しながら海岸を練り歩き、夏の澄み切った星空を眺めていた。  光の檻の騒動の後――。  疲弊していたドッペル達は徐々に回復し、コルク達の容態も少しずつ快方に向かっていた。  休養も兼ねた夏のバカンス。  やがて、あなた達は明日、訪れる事になる海の家の近くで立ち止まる。 「明日は、この海の家を貸し切りの状態で利用する事が出来るんだよな」 「のんびり過ごす事が出来そうね」  あなたの呼び掛けに、パートナーはそっと遠くを見るように視線を上げる。  穏やかな水の流れのように、ゆったりと流れる時間。  南の空を――小さな流れ星が流れた。 ●  何処までも澄み渡る青空に、白と黒のコントラストが眩しい綺麗な入道雲。  燦々と降り注ぐ陽の光に包まれたターコイズブルーの海は深い青と混じり合い、時に白砂を浮き立たせていた。  ヴェネリアの海辺に面したベレニーチェ海岸。  夏空の下、何処からか流れてきたボトルメールが波打ち際で転がっている。 「ここだな」  あなたはドッペル達と共に昨日、訪れた海の家へと入った。  海の家は、あなた達――浄化師達の貸し切り状態になっている。  店員の話によると、夕闇にこの近くで夏祭りが開催されるようだ。  その為、水着や遊具以外にも、浴衣等を借りる事が出来る。 「海水浴だけにするか、夏祭りだけにするか。それとも――」 「私は、どちらも行きたいな」  あなたの何気ない問い掛けに、パートナーは同意を求めるようにドッペルと顔を見合わせた。
【創国】虚栄の孤島西部で整地を手伝おう!
とても簡単|すべて

帰還 2020-07-18

参加人数 6/8人 しらぎく GM
 虚栄の孤島。  かつて栄えた国があったというこの場所は今や見る影もなくて、島の各所には伸び放題に生い茂った草、朽ち果てた館やかつての生活の残骸があり、それらは否応なく過ぎた時の流れの無情さを訴えてくる。  そしてその場所に今、あなた方はやってきた。  この荒れ放題の虚栄の孤島は今まで冒険者たちが訪れてはいたが、これから再び人が暮らしていくために生まれ変わるのだ。  そのために、必要なこと。土地の整地作業だ。 「やあ、君たち。よくきてくれたね。助かるよ」  人懐こそうな笑みを浮かべてあなた方を出迎えたのは、オクトに所属するひとりの青年だ。  彼の背後には数十人ほどのメンバーもおり、彼らは青年が説明をしている今も造成作業に汗をかいている。  この荒れ果てた場所をかつてのように再び栄えさせるためにはまず、人々が日常を営む基盤となる町が必要だ。  だが木材などの建築資材を運べばすぐに家を建てられるわけではない。 「見ての通り、この場所の土地は町を作る以前に建物を建てられるような状況じゃない。草は伸び放題、木は生え放題で地面もデコボコ。参っちゃうよねえ」  ふふ、と笑いながら頭をかく青年の様子は、彼のまとう雰囲気のためか言葉の割に大して困っているようには感じられない。 「でもね、すごいことにこの西部では魔結晶が発掘できるんだ。ここに魔結晶を採掘する鉱夫たちが住むための家や、魔結晶を加工する工房を作るのもいいかなって。他にも何ができるかなあ。考えただけでも楽しくなっちゃうよ」  青年はいずれ生まれ変わるこの島の未来へ期待に胸を膨ら混ぜているのか、腕を組んで目を閉じてそう言った。  だが彼はすぐに目を開いて、「まあその前に整地をしないとどうもならないんだけどね」と直面している現実に、ほんの少し疲れたような笑みを浮かべた。 「木々の伐採はすでに終えてあるから、あとは草を刈って根を掘り出し、地ならしをするだけなんだ」  たしかに、西部には木がたくさんあると言われていたが、今あなた方がいる場所にはほとんどなく、ほんの少し切り株が点在しているくらいだ。その切り株も、青年が説明をする後ろでオクトのメンバーや逃亡奴隷たちがせっせと除去作業をしている。 「用具は一通り揃えてあるから、君たちも僕たちと一緒に、怪我のないように、無理のない範囲で土地の造成作業を手伝ってもらえるとありがたい。服も作業着を貸し出すから、使いたい人はどうぞ使ってね」  そう言って、青年はシートの上に広げられた用具を指した。  さあ、潮風香る虚栄の孤島で土地の造成作業にとりかかろう。
神々の扉
普通|すべて

帰還 2020-07-17

参加人数 9/16人 土斑猫 GM
 深夜の教団本部。室長室。魔術灯の薄明かりの中、書類に目を通していた『ヨセフ・アークライト』は、感じた気配に顔を上げた。  部屋の窓。いつの間にか開いたそれの前に、二人の人影が立っていた。 「室長さん……」  朱髪の少女、『カレナ・メルア』が呼びかける。 「話が、まとまった。明日、始まる」  銀髪の少女、『セルシア・スカーレル』が告げる。 「ボク達は、皆を信じてる」 「だから、貴方も信じて」  見つめる二人の眼差し。願い。ヨセフは、ゆっくりと頷く。 ――承った――。  厳かな、声が響く。  開け放した窓。靡く、カーテンの向こう。大きな影。青く爛々と光る、双眼。雄々しい息吹が、夜気を揺らす。 ――次なる陽の明けより、始めよう――。  『神馬・スレイプニル』は、宣言する。 ――『神契りの儀』を――。  何処か遠くで、稲光が鳴いた。  ◆  異変は、その日の夜明けと共に起こった。  アークソサエティを中心に、天を厚い黒雲が覆った。  あらゆる沼や池、湖や川が湧き立ち、不気味な色の霧を吐き出した。  明星の黄昏に溶ける間際だった星々が、次々流星となって地に降りた。  天が吠え、幾条もの稲妻が降り注ぐ。  霧は毒と酸を湛え、ありとあらゆる場所に染み絡む。  降りた星は数多の戦士へと姿を変え、蛮猛満ちる刃を振るう。  雷禍に焼かれ。  毒に溶かされ。  蛮刃に抉られ。  悲鳴が上がる。  哀れなベリアル達の、下卑た悲鳴が。  ◆ 「お姉様」  少なからずの焦燥が混じった声に呼ばれ、『最操のコッペリア』は視線を向けた。  藍髪の少女、『月影のアルテラ』が言う。 「アークソサエティ周辺に配備していたベリアル達が、攻撃されています」 「あんの訳の分かんねー現象っす! 何なんすか!? アレ!」  テンパりまくる紅髪の少女、『陽光のアルメナ』をスルーして、アルテラに尋ねる。 「損害は?」 「スケール1・2の低位はほぼ全滅。スケール3も力の弱い下位・凡位が……」 「上位スケール3、スケール4・5は無事ですのね?」 「はい」 「なら、問題ありませんの。放っておきなさいの」 「どぅえぇー!?」  思わぬ指示に、ドン引きするアルメナ。 「煩いですの。アルメナ」 「だ、だってだって! 何すかその冷酷無比で酷薄無情な判断は!? 例え主が許しても、ギガス様辺りが激おこプンプン丸! っすよー!? 多分」 「『深淵の氷墓(アブロムトム・セプルクロム)』」  アルメナの足元が凍てついて砕ける。口を開けた深淵。落っこちるアルメナ。 「あ〜〜れ〜〜……」  長く尾を引く妹の断末魔を華麗にスルーして、アルテラは問う。 「かなりの戦力が失われますが……?」 「この程度で滅せられる雑魚、どの道黒炎を得た浄化師達相手では、いないも同然ですの。って言うか、寧ろ邪魔」 「しかし……」  腑に落ちない様子のアルテラにクスリと笑むと、コッペリアは言う。 「つまらない心配するよりも、しっかり見学しておきなさいの。この『力』、場合によっては敵になりますのよ?」  言われて見る外界。蹂躙する、威容の意思。  少しだけ、身震いする。 「一体、何者が……?」 「あの軍勢、『ワイルドハント』ですの」 「な……! では……」 「ええ」  強張るアルテラを見て、笑う。 「高位八百万の連中ですの」 「ええぇー!!?」  響く絶叫。命辛々這い上がってきたアルメナが、目ん玉剥いてビックリしている。 「えらいこっちゃないすか!? きんきゅー事態じゃないすか!! 出陣っす! 全面戦争っす!! 死なば諸共っすー!!!」  ダンッ!  足を鳴らすコッペリア。ボコッと広がる穴。 「あ〜〜れ〜〜……」  遠ざかって行く悲鳴(二度目)をスルーして、コッペリアは言う。 「此れは警告。『これからやる事に口出しするな』と言うね」 「やる事……?」  答えずに、笑う。 「心なさい。これからの戦いは狩りではありませんの。文字通りの、戦争。主の理想の正しきを証明する為の、尊き聖戦ですの」  楽しそうに笑うコッペリア。アルテラは、ただ小さく身震いした。  ◆ 「おぅ! いつまでも寝惚けてねぇで、出てきて面見せな! クソ虫共!」  本部内で異変の調査に向かおうとしていた浄化師達は、突然鳴り響いた雷鳴の如き声に飛び出した。  外に出た彼らが見たモノは、天に浮かぶ一つの人影。  玉虫色に輝く鎧を纏った、褐色肌、白髪碧眼の女性。見下ろした彼女は、女性の力には余りそうな大きさの首狩り鎌を軽々と肩に担いでニヤリと笑む。 「おっし! 出てきやがったな。なら、名乗るぞ! よっく覚えとけよ!?」  鳴り響く声は激しくも、耳障りではない未知の響き。高らかに、名乗る。 「オレは『エリニュス』! 高位八百万が一柱、『復讐の女神・エリニュス』だ!」  『エリニュス』。聞き覚えのある名。かつて対峙した脅威、『報いの神兵・アダマス』を生み出した存在。 「そうだ!」  皆の心を読んだ様に、答える。 「いつぞやは、オレの権能が世話になったな? 暇潰しの玩具相手とは言え、褒めてやる!   だが、此度の用は其れじゃねぇ!」  振り下ろす大鎌。眼下の浄化師達を示す。 「これより、八百万の代表として『神契りの儀』を行う。言いだしっぺは教団(テメェら)だ! 拒否権はねぇ! 逃げるも無しだ! もしそれをすれば、この国の人間全てを祟り殺す!」  走る、緊張と動揺。 「ただし!」  続ける、エリニュス。 「これを乗り越えた暁には、テメェらに高位八百万(オレ達)との契りの扉を開けてやる! それぞれ結んだ奴らは、永久の友としてテメェらの刃となろう!」  思わぬ言葉。目を見開く。 「分かるな? 直々に手を貸してやる。創造神(糞餓鬼)との大戦(おおいくさ)に! 故!」  回転する首狩り鎌。閃く刃が、自らの首筋を掻き切る。吹き出す、鮮血。 「魅せてみろ。人(テメェら)の魂、矜持とやらを」  血染めの顔が、平然と笑う。  宙に舞った鮮血が、幾つもの渦を巻く。  渦は凝縮し、紅く脈打つ結晶となる。既知の浄化師が息を飲む。  ――『エリニュスの心臓』――。  天人(アレイスター)もが興味を示した、稀有なる神宝。そして、『報いの神兵・アダマス』の核。それが、幾つも。  ――まさか、あの数のアダマスを――。  戦く皆を睥睨し、笑むエリニュス。 「そうだ。アダマスだ。だが、光栄に思え。『特別製』だ」  細い指が、薄い唇に当たる。 「浄化師(お前ら)とは、つくづく縁がある。オレの『素体』を、教えてやろう」  口からたゆる、虹色の霧。 「我が始祖。誉れ高き、生物第一世代……」  生じた虹の霧は輝く心臓を包み、尚妖しく瞬く。 「――『霊獣・虹龍(こうりゅう)』――」  それは、時刻みの秘宝、『蜃(しん)』。その、本体。  虹を纏った心臓が、落ちる。響く、振動。閉じる、空間。  虹の霧に満たされていく世界を、室長室から見下ろす三つの人影。 「……わたし達だけでは、八百万達との扉を開く対価にしかならなかった……」 「頑張って……。皆……」  祈るセルシアと、カレナ。ヨセフは黙って、神域と化していくアークソサエティを見つめる。  確たる信頼を抱いて。  猛き女神が吼える。その資格を、しかと魅せよと。 「さあ、我が同胞達よ! とくとご覧あれ! 滅びを拒む、哀れ愚かな雑種の霊長! その足掻きの舞いが、我らが伴侶として次代を継ぐに相応しきかを!!」  霧の中から現れたモノ達。  前にした浄化師達が、驚愕と恐怖に震える。  劇が始まる。  聖も邪もない、隔離世の舞台で。  神と契る為の、運命の歌劇が。
【創国】島を開拓しよう!
簡単|すべて

帰還 2020-07-14

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 虚栄の孤島。  教皇国家アークソサエティ「ルネサンス」内、『ローゼズヘブン』のすぐ隣に存在する島だ。  かつては小国として栄えていたが、今では衰退し見る影もない。  荒れ果てた廃墟が広がるものの、庭園などには草花が美しく咲き誇り、野生動物の棲む楽園にもなっている。  そして島全体に無数の魔法によるトラップが存在し、島ひとつがダンジョンとして認定されていた。  それが少し前の虚栄の孤島である。  しかし今は違った。  王族の末裔である少女、王女メアリー・スチュアートを象徴に国の復興が行われることになったのだ。  彼女を補佐するのは、かつては反教団組織として活動しながらも、今では教団本部と友好関係を結ぶことになったオクト。  彼らは教団の裏の活動により迫害を受けた者たちが中心ではあるが、浄化師の活躍により『一応の』関係を結んである。  虚栄の孤島の新たな国民として1000人ほどが現地で活動を始めていた。  国民は彼ら以外にも。  それは魔女だ。  かつて魔女狩りを受け隠れ住んでいた彼女達だったが、新たな国民として500人ほどが訪れ国の開拓に協力している。  残りは逃走奴隷などの社会的弱者だ。  オクトは結成メンバーからして、社会から迫害を受けた者が中心であるため、同じような境遇である社会的弱者は積極的に受け入れ国民としていた。  総数にして2000人ほどが、虚栄の孤島の開拓を始めている。  この人数が少ないかというと、微妙な所だろう。  なにしろ現時点の虚栄の孤島は、自然豊かと言えば聞こえは良いが、実際の所は荒地の廃墟だ。  食糧自給すらまともに出来ていないので、海外からの輸入が生命線。  とにかく何もかも足りない。  必要な施設は何ひとつなく、かろうじて倒壊を免れている廃墟や王城跡地を住処にして、雨風を防いでいるのが現状だ。  けれど、不思議と彼らの表情は明るい。  自分達の居場所が無かった彼らにとって、母国となる場所が出来るのは希望なのだ。  その希望をより良く形にするため、浄化師に指令が出されました。  内容は、虚栄の孤島の開拓を手伝って欲しいとの事です。  資金は、島から産出される魔結晶を売ることで手に入れているので、少なくとも当面は心配がありません。  また、魔女が国民として協力するので、様々な施設を作るのは非常に短期間で出来るとの事です。  とにもかくにも浄化師に求められるのは、島に何を作り、どう発展させていくのか?  その手伝いをするため、アイデアを出して行動してください。  指令内容を聞いたアナタ達は島に訪れ、開拓を始めました。  そして同時に、開拓の手伝いとして、とある人物が人を連れ訪れていました。 「サー・デイムズ。協力を申し出るとはどういうつもりだ」  室長ヨセフは、同じく室長であるデイムズ・ラスプーチンを島の港で迎え入れた。 「おお、ヨセフ殿。わざわざ出迎えてくれるとは、嬉しいことだ」  デイムズはヨセフに笑顔で近付くと『力強く』握手しながら言った。 「保険だよ。ヨセフ殿」 「……お前とこちら、どちらが生き残っても良いようにか」 「はははっ、さすが頭は回る」  ヨセフの手を握り潰さんばかりに握手を続けながらデイムズは続ける。 「私は、人が世界を制するなら、誰でも良いと思っているのだよ。アレイスター殿でも、私でも、もちろんヨセフ殿、貴殿達でも構わない」  非道を堪らわず、必要ならば血縁もパートナーも手に掛けることに迷いが無いデイムズだが、それでも人の守護者として言い切った。 「人を、神なんぞの好きにはさせん。それが成せるなら、誰が成そうと構わん。生き残った者が神を殺せば良い。私は、期待しているのだよ、ヨセフ殿。貴殿達に。今でも、手を組んでも良いと思っている」 「断る」  ヨセフは、力の限り握り返しながら言った。 「お前は悪だ。デイムズ・ラスプーチン。そんなお前と、手を組む気はない」 「はははっ、相変わらず若いな。清濁併せ飲むことは出来ても、悪は許せんか」 「当たり前だ。仮に、共に戦い神を殺したとして、その瞬間に背中からこちらを刺すのがお前だろう」 「もちろん。それが人だ。聖も邪も、善も悪も、全てが人間だ。知らぬわけでは無かろう?」 「知った上で、どう生きるかを選べるのが人間だ。お前の生き方は認めん」 「威勢が良いことだ。その余裕、貴殿の力ではなく、浄化師達による物なのは分かっているのだろう?」 「当たり前だ。言っておくが、俺はお前より弱い。だが浄化師達は、お前を打ち負かすぞ」 「それは楽しみだ。いずれ戦争をしよう。だが今日ではない。ヨセフ殿、心配するな。今日手伝いに来たのは、他意はない。少なくとも今は。分かっているのだろう?」 「ああ、分かっている。まだ準備が整いもしないのに、ここで仕掛けてくる人間じゃない。精々が敵前視察だろう。好きにしろ。その代り、しっかり働いて貰うぞ」 「はははっ、使えるなら敵でも使うか。そういう図太さは、好ましい」  楽しげに笑うと、デイムズはヨセフから手を離し、部下を連れて島の開拓の手伝いに向かった。  などと、イレギュラーな人物も手伝う中、島の開拓は始まりました。  この状況、アナタ達は、どう動きますか?
浄化師の休日
とても簡単|すべて

帰還 2020-07-08

参加人数 16/16人 春夏秋冬 GM
 教団本部室長室でヨセフは言った。 「休暇が必要だな」 「ようやく休む気になったんですね」  ヨセフの書類仕事の手伝いをしていたウボーが返す。  これにヨセフは平然と言った。 「休むのは浄化師だ。ここ最近、色々と荒事に駆り出したからな。本部が襲撃された時も、その後の片付けも込みで働かせすぎた。偶には休んだ方が、効率が良くなる」  「それは室長にも言えると思うんですが。室長、休みを取られたのはどれぐらい前です?」 「人を仕事中毒(ワーカーホリック)みたいに言うな。心配せんでも、年に一度は休みを取ってるぞ」 「それ、妹さんの墓参りのことですよね。休暇じゃないと思います」 「立派な休暇だ。数が少ないのは否定せんが」  2人は喋りつつも、手が全く止まらない。  もはや脊髄反射レベルで書類仕事をこなしている。  申請書類の精査を終え、ヨセフに渡すため分類しながらウボーは続ける。 「それで、休暇と言っても、どの程度の規模で出すんですか? さすがに1週間以上は厳しいと思うんですが」 「1日だ。その代り転移方舟も好きに使えるようにしておく」 「アークソサエティ以外の国にも行けるようにですか?」 「そうだ。名目上は、各地の巡回だ。これなら好きに転移方舟が使えるし、予算から引っ張って来れる」 「そういうの権力の乱用って言いません?」 「乱用せずしてなんのための権力だ」 「そですね。あ、それなら関連する申請書類上げときます」 「助かる。それにしても手際が良いな、お前」 「姉に泣くまで仕込まれました」  上に双子の姉がいるウボーは、当時のことを思い出し遠い目をする。  その間も書類を仕上げる手が止まらないのは、確かに色々と仕込まれているようだった。 「それにしても日帰りだと、そんなに大したことは出来ませんね」  浄化師達が休むための関連書類を仕上げながらウボーは言った。 「どうせ休むなら、1か月ぐらいだらけたいです」 「行きたい所でもあるのか?」 「ニホンの温泉に行ってみたいですね。セパルの話だと、落ち着いた温泉知ってるみたいですし。セレナと3人で、だらーっと温泉に浸かってみたいです」 「全てが片付くまでは無理だな。それまでは騙し騙し、短い休みを入れていくしかない」 「ですね。そのためにも、この書類早くし上げましょう」  そう言うと、2人は黙々と書類を書き上げていくのだった。  そんなことがあった数日後。  指令という名目で、浄化師達に休みが出されました。  転移方舟も使えるよう手配しているので、アークソサエティ以外の国にも日帰りで行けます。  もちろん、アークソサエティのメインストリートである『リュミエールストリート』をぶらついてみるのでも構いません。  指令という形で報酬が出るので、それをぱーっと使って騒いでみるのも良いでしょう。  日々の疲れを癒し、新たな戦いの日々を送るためにも休暇は大事です。  さて、この指令。  アナタ達は、どうしますか?
地獄の神に事情を聞きに行こう
普通|すべて

帰還 2020-06-30

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
「苦労しているらしいな。取り敢えずは、これでも飲んで休むといい」 「ありがと。琥珀さん」 「わぁ、あっま~い。染みるなぁ~」  甘いミルクを飲む2人の少女、セルシア・スカーレルとカレナ・メルアを見詰めながら、魔女である琥珀姫は労るように言った。 「随分と、あちらこちらを巡っているみたいだな。得られるモノは、あったのか?」 「それ。その事で、相談がある」  セルシアは、くいっとミルクを飲み干すと、これまでの事情を話す。  八百万の神との協力関係を結ぶため、各地を巡っていた2人だが、その一柱『無明の賢師・アウナス』との会話を切っ掛けとして、ある謎にぶち当たったのだ。 「イザナミ、か……」  タナトスとも呼ばれたそれは、浄化師達にたびたび関わることがあった。  それを危惧した2人が、浄化師達に害が及ばぬよう調べて回っていたのだが、最後の一手には届かず琥珀姫に知恵を借りに来たのだ。 「琥珀さん、何か知らない?」  カレナに尋ねられ、琥珀姫は軽くかぶりを振る。 「すまない。話を聞いた限りだと、元々はニホンを起源とするものだろう? こちらで騒ぎになり始めたのは、精々ここ数年かそこら。その頃は、『墓』に引きこもっていたからな。あいにくと、そんな珍奇なモノは――ん?」  琥珀姫は声を上げると、苦虫を噛み潰したような表情になりながら言った。 「……メフィストだな。この世の可怪しな事は、九分九厘アイツの絡みだ」 「え~と、それは……」 「さすがに冤罪じゃ……」  宥めるように言うセルシアとカレナだったが、琥珀姫は段々とヒートアップする。 「や、間違いない。これまでの経験則と世の理が言っている。間違いない。となれば、一つ愉しい遊戯といこうか?」  というわけで、教団に居たメフィストは魔法の掛けられた鎖で縛られ転がされていた。 「さて。洗いざらい吐いて貰おう」 「な~にをでーすかー」  鎖で縛られたままメフィストはゴロゴロ転がる。 「冤罪でーす。弁護士を呼んで下さーい。スリーサイズは教えませーん」 「永久保存されるなら、千年琥珀と琥珀の薔薇園。どっちがいい? それくらい、選ばせてやるぞ?」 「ノーっ! 目がマジでーす!」  芋虫のように体をくねらせて逃げようとするメフィストを魔法で引き戻すと、琥珀姫は続ける。 「この手の忌み事には大抵お前が絡んでいる。それが真理だ。弁解は聞かない。いいから、口が動くうちに洗いざらいブチ撒けろ」 「だから、な~にをでーすかー」 「『イザナミ』。こちらでは最近まで『タナトス』とか『殺人現象』とか呼ばれていた。それの、素性だ」 「はい? なんですかそれー? 本気で知らないんですがー」  鎖で縛られたまま器用に体を起こすと首を傾げるメフィストに、琥珀姫は事情を説明する。すると―― 「……マ・ジ・で?」  メフィストは一瞬絶句したかと思えば、本気で慌てた口調で言った。 「本気で拙いじゃないですかー! それは私のせいじゃないですけど切っ掛けというか原因ではありますけどそれにしたってもー!」  うにょうにょと体をくねらせ縛られていた鎖から脱出すると、メフィストは焦ったまま続ける。 「ガチで放置するのはヤベーんでどうにかしないとダメですよー」  というわけで、メフィストはヨセフを頼ることにした。 「というわけなのですよー」 「何がだ」  いきなり室長室に来たメフィストにヨセフは胡散臭げな視線を向ける。 「唐突に部屋に来るなりなんだ。ちゃんと最初から話せ」  「おーう。高速言語が通じませんかー。やれやれでーす」 「――セパルか? メフィストが部屋に来てるんでシャベルを持って来てくれ」 「待って下さーい! なんで誰も彼も私を埋めようとするんですかー!」  教団内に居る人物に連絡の取れる魔導具に向かって話すヨセフを止め、メフィストは続ける。 「ちゃんと筋道立てて話しますから、聞いて下さーい」 「……最初からそうしろ」  そして話を聞いたヨセフは、メフィストに尋ねた。 「つまりタナトス、いや、今はイザナミか。その由来を知っているんだな」 「そうでーす。あれは、元々は地獄の破片なのでーす」 「……どういうことだ?」  聞き返すヨセフにメフィストは応える。 「あれは今から600とちょっと前のことでーす。地獄の神が不在の時があったのでーす」 「……居るのか、地獄に神が」 「居るのでーす。前任の創造神が後輩に権能を譲り渡した後、世界を管理するための神としての役割に就いているのでーす」 「なるほど。それは分かったが、なんで不在の時があったんだ?」 「現在の創造神であるネームレスワンに意見したので、地獄の神は左遷させられたのでーす」 「……左遷?」 「比喩でーす。とにかくどっかに飛ばされたようなもんでーす」 「なるほど……そういえばメフィスト。お前、600歳ちょっとだったよな」 「偶然でーすねー」 「……まぁいい。それで、地獄の神がいなかったせいで何が起こったんだ」 「現世と地獄の一部が重なっちゃったのでーす」 「まさか、現世に地獄が溢れたということか?」  硬い口調になるヨセフにメフィストは応える。 「そこまでは行ってませーん。あくまでも重なっただけでーす。それだけならまだ良かったんですがー」 「……まだあるのか」 「ありまーす。ちょうどその頃、地獄と重なっちゃった場所で、八百万の神が人間に殺されちゃったのでーす。それにより祟り神となってしまったその子と地獄が共鳴してしまい、重なったまま固定されちゃったのですよー」 「大事じゃないか」 「そうでーす。地獄の力が現世に溢れたせいで、妖怪が発生するようになっちゃったのでーす」 「ちょっと待て。それなら、その地獄が重なった場所というのは――」 「ニホンのキョウトでーす。それで慌てて新任の地獄管理神が就くことで事態の打開を図ったのですがー、その時に問題が起ったのでーす」 「……それが、地獄の破片、か」  状況を推論で把握したヨセフは苦い顔をする。そこにメフィストは続けた。 「新しい地獄の神が就くことで安定させたんですが、その時の反動で地獄の一部が壊れ破片として現世に残ったのでーす。それは時間が経てば地獄に戻る筈だったんですがー」 「戻らなかった破片もあったと。それがイザナミか」 「そうでーす。理由は分かりませんが、生物的な性質を得た挙句に、多分人間に信仰されちゃったんでしょうねー、疑似的な八百万の神にまで成っちゃってるんでーす」 「どうするんだ、それ」 「どうにかするために力を貸して欲しいんですよー」  という話があった数日後、ひとつの指令が出されました。  内容は次の通りです。  キョウトの大江山に行って地獄の管理神と会う手伝いをして欲しい。  地獄の管理神と会える魔方陣をメフィストが造り起動するので、魔力を提供して欲しい。  そのあと魔方陣を起動させると、地獄の管理神の配下である獄卒が排除に来るかもしれないので、守って欲しいとのことでした。  この指令を受け、アナタ達は――?
【機国】人身売買組織を壊滅せよ!
普通|すべて

帰還 2020-06-26

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 機械都市マーデナクキス。  その中でも発展めざましい、天使を失った街『ロスト・エンジェルス』。  幾つもの高層建築が立ち並ぶ、その狭間。  ビルとビルの隙間に、その建物は有った。  幾つもの魔術的迷彩と、建築学を駆使した配置により、その場所を知らぬ者は訪れることが叶わない。  そこに浚われた子供達が多く集められていた。 「うるせぇぞガキ共!」  粗野な男が子供達に向かって怒鳴る。  彼は最近、子供達を浚っている組織に入った男だった。 (クソ、楽に稼げる仕事だと思って入ったのに)  自身の粗暴さで仕事にありつけず、細かい犯罪行為で食いつないでいた彼だったが、ある時つるんでいた仲間の伝手で、この組織に入ることが出来た。  入った組織は、違法の人身売買組織だった。  奴隷取引は違法ではない。  定められた条件の元、借金などで身を売った、あるいは売られた人物をやり取りするのは合法である。  だが男が入った組織は、表ではアークソサエティに伝手を持つ人材派遣の商会としての顔を持ちながら、裏では非合法に人を浚って売り捌く顔を持っていた。  どうしてそんなことをしているかと言えば簡単なことだ。  元手を安くして儲けることが出来るからだ。  法に基づいて奴隷のやり取りをするには、それなりのお金がかかる。  けれど『商品』である人間は、そこらに居るのだ。  だったら、浚った方が安く済む。 「合理的なことだろう?」  男は、雇い主である商会の主、ユーゴ・アルベルダの言葉を思い出していた。  男が御機嫌取りに今の商売を持ち上げると、彼は静かな笑みを浮かべ言ったのだ。  その時の値踏みするような視線を、男は忘れられなかった。 (舐めやがって)  思い出し、男は舌打ちする。  男と会話を幾つか交わした後、ユーゴは彼を浚った子供達の見張り役として就けた。 (もっと良い仕事を寄こせってんだ)  乱暴に酒を飲みながら、再び舌打ちする。 (俺はもっと、デカい仕事が出来るんだ)  根拠のない自信を抱きながら、男はポケットからくしゃくしゃになった1枚の紙を取り出す。  それはユーゴが、アークソサエティの新聞社にインタビューされた時の記事のくり抜きだ。  媚を売るためにユーゴのことを調べていた男が見つけたそれには、次のような記事が載っていた。 「奴隷提供とは聞こえが悪い。彼等は自らの選択でこの道を選んだんです。  そう。他者には絶対に体験できない人生を」  記事はユーゴを非難するようなことも書かれていたが、新進気鋭の企業家として持ち上げるような事も書かれていた。 (チクショウ。なんであの野郎ばかり良い目を見てやがるんだ)  同じ年頃でありながら、酒でくたびれた自分とは違う、50代でありながら美丈夫と言ってよい見た目のユーゴを男は妬んでいた。  しかし勝てるとも思っていない男は、八つ当たりで子供達を殴りつけようとし―― 「何をしている?」  いつの間にか来ていたユーゴに背後から声を掛けられ、びくりっと男は振り返る。  視線の先には、オーダーメイドの背広を着こなしたユーゴと、彼の傍で控えるようにして一緒に歩いている少女の姿が見えた。 「し、社長……その、これは……」 「何をしているのかと、聞いているのだがね」  ユーゴは卑屈に身体を縮める男の傍に近付くと、革袋に砂をつめたブラックジャックを取り出し殴りつけた。 「ひっ!」 「私が、命じたのは、商品の管理だ。傷をつけろとは言ってない」 「す、すいませんすみません!」  無抵抗で殴りつけられながら男は必死に懇願する。  だがユーゴは容赦せず、何度も何度もブラックジャックで殴りつけ、男が蹲った所で腹を蹴った。 「ぐげぇ……」  呻き声を上げながら許しを請うように体を縮める男を、ユーゴは観察するような冷徹な眼差しで見つめたあと、恐怖で黙り込んだ子供達に近付く。  そして子供の1人の頬に手を当て、静かに言った。 「ああなりたいか?」  恐怖で返事も出来ない子供の頬を、音が響くほど叩く。 「返事は?」  さらに叩く。  頬が赤く腫れるほど叩かれた頃、ようやく子どもは絞り出すような声で応えた。 「――ぃ、はい、はい、はい……」 「それで良い。で、まだ叩かれたいか?」 「ぃ、いいえ――」 「そうか。なら、余計な手間を掛けないことだ。また、あの男を躾けなければならん。もし死んだら、次はお前達の誰かだ」  ユーゴの言葉に子供達は固まる。  それを見下ろすと、ユーゴはその場を後にした。  しばらくして、彼と一緒に歩いていた少女が口を開く。 「あいかわらず商品の管理が巧いですねぇ」 「ありがとうございます。人形遣いさん」  亀裂のような壊れた笑みを浮かべながら、少女姿の人形遣いは返す。 「貴方を助けて援助した甲斐がありました」 「感謝しています」  かつて妻を殴りつけ、それを見かねた息子に刺されたことのあるユーゴは淡々と返す。  致命傷とは言えない、けれど放置すれば死んでいた傷を人形遣いに癒されたことがあるのだ。  その後、彼は人形遣いから得た資金を元手に今の組織を起こした。 「色々と面倒なことになりそうでしてね。そろそろ、集めた素材を渡して欲しいんですよ」 「分かりました。では来週までに予定数を確保し送ります」 「ええ、お願いしますねぇ」  そう言うと人形遣いは、ユーゴの元から離れどこかに消えた。 (下種が)  人形遣いが居なくなったのを確認してから、ユーゴは胸中で思う。 (次の取り引きはしてやるが、そこで終わりだ。教団上層部のサー・デイムズと連絡が取れる伝手は確保した。彼に詳細を話し始末してやる)  その時の算段をつけながら、ユーゴはその場を後にした。  そんなことがあった頃、マーデナクキスの人身売買組織の殲滅に動いていたオッペンハイマーから、教団本部に協力要請がありました。  内容は、人身売買組織に潜入して浚われた子供達を救い出して欲しいとの事です。  特定の地域から子供達が定期的に消えていることを調べた彼らは、しかし手が足らずに困っているようです。  これを受けヨセフは指令を出します。  もちろん、子供達の救出と人身売買組織の壊滅です。  そのためにどうするかを話し合っていると、魔女のメフィストがやって来て提案しました。 「子供の姿にしてあげますから、わざと捕まってみるのはどうですかー」  つまりは囮作戦です。  これをオッペンハイマーに伝えると、少し前の指令で浄化師が提案した『伝葉』を用いた広域連絡網を、件の地域に配備したので、それを使って欲しいとの事でした。  手段は用意され、あとは決行するのみです。  この状況で、アナタ達は――?