《悲嘆の先導者》フォー・トゥーナ Lv 41 女性 ヒューマン / 墓守


司令部は、国民から寄せられた依頼や、教団からの命令を、指令として発令してるよ。
基本的には、エクソシストの自由に指令を選んで問題無いから、好きな指令を受けると良いかな。
けど、選んだからには、戦闘はもちろん遊びでも真剣に。良い報告を待ってる。
時々、緊急指令が発令されることもあるから、教団の情報は見逃さないようにね。


出会いはemotional
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帰還 2018-05-08

参加人数 8/8人 木口アキノ GM
 ここは、薔薇十字教団本部談話室。  夕食後のひと時、親睦を深めるためにパートナーとこの部屋で過ごす浄化師も多数いる。  あなたたちも、そんな浄化師のひと組であった。  ほとんどが椅子にゆったりと腰掛け会話を楽しんでいる中、椅子やテーブルの間をちょこまかと駆け回る子ウサギのような少女の姿があった。 「こんばんは、はじめまして! あたしはついこの間浄化師の仲間入りをしたロップといいます!」  少女ははきはきとした声で挨拶をして。 「突然ですが、お2人の出会いについて聞かせてくださいっ」  と、手にした羽ペンをマイクのように相手に向ける。  突然そんなことを言われた方は困惑気味だ。  ロップは怯むことなく、言葉を続ける。 「あたし、将来はルポライターになりたいんです! そして、後世に残る、浄化師のルポタージュを書くのが夢なんです!」  きらきらと瞳を輝かせ、未来の夢を語るロップ。 「その第1段階として、浄化師たちの出会い、そこから記録していきたいと思いまして。浄化師の数だけ出会いの物語があるんです。それを、文字に残していきたいんです!!」  熱のこもったロップの言葉に、聞かれた相手は仕方がないなぁ、と苦笑いで語り出す。 「ありがとうございますっ!」  ロップは大急ぎでインクの蓋を開けると、手にしていた紙の束に羽ペンを走らせ、耳にした内容を書き記していく。  ひととおり話を聞き終えると、「ありがとうございましたっ」と勢いよく頭を下げ、他にも話を聞けそうな人はいないかとキョロキョロし始めた。  そして、ロップの瞳はあなたたちを見つけた。  とととっ、と、ロップが駆け寄ってくる。そして、あなたの目の前に立つと。 「こんばんは、はじめまして! あなたたちの出会いの物語を、聞かせていただけませんか?」  さて、少女の夢のために、少し昔話をしてあげることにしようか……。
ゼヴィ夫人のタロット夢枕
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帰還 2018-05-07

参加人数 8/8人 北織 翼 GM
「オホホホホホ、あたくしの召喚したこの強敵、あなたに倒せるかしらねぇ?」  魔女を彷彿とさせる濃紺のロングドレスから色白の肌を覗かせ、紅のマニキュアと口紅で彩られた老夫人が、森に囲まれた雄大な草原で高笑いを上げながら珍妙な魔物を何体も召喚します。  夫人が召喚した魔物は……  え?  ピーマン?  はぁ?! 「おのれピーマンベリアル! 成敗っ!!」  教団の制服を翻し、女性の祓魔人は得物を振り回し次々と巨大ピーマンを薙ぎ払います。 「うっ、青臭いっ! ピーマン臭いっ! いやぁっ、汁が飛んできた! うげぇっ、苦い! でも、負けない……負けないんだから!」  祓魔人は頬を目一杯に膨らませ息を止めて最後のピーマンベリアルを叩き潰しました。  ピーマン汁にまみれながら、祓魔人は微笑みます。 「これで全部倒したわ……!」 「フフ、あなたやるじゃない」  夫人はニヤリと笑いながら、祓魔人の前から姿を消しました……。  ……  ………… 「……ていう夢だったのよ! ピーマンベリアルなんて、あり得ないでしょ!? でもきっと、夢の中だから何でもアリなのかもね」  翌日、教団本部のカフェテリアで軽食を摂るあなたとパートナーは、夢の中でピーマンベリアルを倒したという女性祓魔人の話を聞いていました。  偶然にも隣り合うテーブルに腰掛けた縁であなたたちは彼女と言葉を交わす事になったわけですが、ピーマン炒めを嬉々として頬張りながら話す女性祓魔人は、したり顔で続けます。 「ねぇ、このピーマン、私の好物だと思う?」  あなたは頷きます。  だってそうじゃないですか、こんなに美味しそうにピーマンを口に運んでるなら……。  ところが。 「実はね、私ピーマン大嫌いだったの。こんな青臭くて苦い野菜のどこが美味しいのか分かんないわよね? ……だけど、喰人の彼は野菜が大好き。私がピーマンを残すといつもどこか寂しそうな顔して……彼と楽しく食事がしたくて、ゼヴィ夫人に相談したの」  ゼヴィ夫人……?  あなたは初めて聞く名に首を傾げました。  どうにも気になってしまい、あなたはそのゼヴィ夫人について女性祓魔人に尋ねます。 「あら、あなたも興味があるの? それなら、この辺りの路地裏とか捜してみたらどうかしら。私は昨日、偶然本部の近くの通りを歩く夫人を見つけてね……! 今日もきっと近くにいるはずよ。夫人は神出鬼没だから、早く行った方がいいわ! そして、ゼヴィ夫人に『逆位置夢枕タロット』を貰いなさいな」  早く行けと言っておきながら、この後お喋り大好きな女性祓魔人はあなたたちを小一時間拘束したわけですが……。  ようやく女性祓魔人から解放され、あなたは疲労感満載のまま彼女の話の要点をまとめてみます。 ●ゼヴィ夫人とは、一部の浄化師や教団員に熱烈なファンのいる凄腕タロット占い師である。 ●夫人は神出鬼没、そしてタロット占い師のくせに何故かその日の気分次第で日替わりで3枚のタロットカードしか持ち歩かない。 ●夫人に遭遇すると、裏返しのタロットカード3枚の中からを1枚引くよう言われる。 ●どんな方向から引いてもどうひっくり返しても、何故か夫人のタロットカードは逆位置の絵しか示さない。 ●引いた1枚は夫人からプレゼントされるが、必ずその晩寝る時に枕の下に置かなければならない。 ●そして、その晩は置いたタロットカードにまつわる夢を必ず見る。 ●夫人に貰ったタロットカードは、夢から覚めて起きるといつの間にか消えている……そう、カードは人知れず夫人の元に戻り、こちらの手元に残る事は無い。 ●夢の内容は……けっこうドぎつい。  あなたは半信半疑ながらもパートナーと一緒にゼヴィ夫人を捜しに本部を出ました。  すると……  何ということでしょう!  あなたたちもまた、例の祓魔人のようにゼヴィ夫人に遭遇したのです。 「あぁら、あなたたち、背負ってらっしゃるわねぇ」  ゼヴィ夫人はあなたたちを見るなり意味深にそう言うと、前情報のとおり3枚のカードを差し出してきました。 「さぁ、ここから1枚お引きなさいな」  あなたは恐る恐る1枚のカードをつまみ、そっと引きます。  表を返すと、逆さまの絵柄が目に飛び込んできました。 「そのカード、今晩必ず枕の下に置きなさぁい。それじゃ、夢で会いましょう」  ゼヴィ夫人は優雅に手を振りながら去っていきます。  どこか恐ろしげにも見える笑みを浮かべながら……。  あなたは『逆位置夢枕タロット』を手にしたまま、パートナーと顔を見合わせました。  さて、今宵ゼヴィ夫人はあなたの夢の中でどう暴れ回るのでしょうね……?
対ベリアル戦闘訓練
簡単|すべて

帰還 2018-05-06

参加人数 8/8人 久木 士 GM
「どうしたどうした新人ども! そんなんじゃ『イレイス』にベリアル食わせる前に、てめえらの魂が喰われちまうぞ!」  春のうららかな昼下がり。教団本部の広場に、若い教団員の怒声と浄化師たちの叫びが響く。彼らは初の戦闘任務を直前に控えた新米浄化師たちで、ペアの戦術や魔喰器の最終調整を兼ねた訓練に参加していた。ここには魔術鍛冶屋に所属する鍛冶師たちも同席しており、参加者が装備や感覚に不調を感じた際は即座に調整を行えるようになっている。  浄化師たちの命を繋ぐものにして、世界の救済に不可欠の存在。それが『魔喰器(まぐいき)』や『イレイス』と呼ばれる武器だ。  ベリアルは自らの元となった生物や、怪物に変化してから喰った生物の魂を鎖で縛っている。魔喰器はその鎖を喰うことで囚われた魂を解放し、ベリアルを滅ぼす武器だ。使用には並々ならぬ魔術への理解か、常人を凌駕する強大な魔力が必要とされるが、浄化師ならばその問題は既にクリアしている。  だがその一方で、武器は使用者の精神状態に浅からぬ影響を及ぼす。これが、滅びに抗うために得た力の代償だとでも言わんばかりに。  『アウェイクニング・ベリアル』や『覚醒』と呼ばれる重篤な精神疾患は、「存在理由を見失う」ことや「存在理由に傾倒しすぎる」ことで発症するケースがほとんどだが、魔喰器の捕食欲求が満たされないために発症したという例も稀にある。後者については祓魔人や喰人が教団に所属している限り、ベリアル討伐指令を避けることはできないためほとんど見られない。しかし何らかの理由で武器がベリアルを喰えなくなったとき、覚醒に陥ることが多い。  また魔喰器の力を完全に解放するには、使用者の血を武器に喰わせる必要がある。しかし魔術の知識を持たない一般人や、魔力の安定していない祓魔人・喰人がこれを使用した場合には、必要以上の血を喰われて死に至る。喰われた者は干からびるように体が朽ち、最後には砂となって消えてしまうのだという。  そのため薔薇十字教団では、教団員の安全と魔喰器の保全のため、契約を済ませて魔力を安定させる術を身に着けた浄化師にしかこれらの使用を許可していない。そして魔喰器との接触を必要最低限に留めるため、『口寄魔方陣』による装備の展開システムを完成・実用化させていた。  さて、ここまで説明を聞いた者は「何故この武器には、こんな致命的な欠点が存在しているのか」と考えることだろう。だがその問いについての答えは、驚くほど単純だ。なぜならば『魔喰器』は、生け捕りにしたベリアルから作られているのだから。  魔喰器はベリアルの形状を変化させ、再生能力と殺戮衝動を抑え込んだうえで作られる。この武器がベリアルの鎖を断ち切ることができるのも、捕食欲求を持っているのも、武器になる前は「ベリアルそのもの」だったことが原因だ。激しい戦闘で魔喰器が損傷あるいは破壊された場合、一日程度で完全に復元されて再使用可能になることの理由も、元となった「素材」の驚異的な再生能力を利用しているためだ。  ベリアルを魔喰器へ完全に作り替えることが可能になったのは、今からほんの十年前のこと。人間がベリアルを滅ぼせるようになったのも、教団に所属する『ヴェルンド・ガロウ』という名の魔術鍛冶職人が、1708年にこの技術を確立してからだ。  彼は捕らえたベリアルの形を変化させると、そこで記憶させた武器形状の維持と復元にのみ再生能力を行使できるよう「加工」を施す。魔喰器の形状自体も、オーソドックスな剣や銃から大鎌や盾まで実に多くの種類が存在し、種族やアライブの戦闘スタイルに合ったものを選択することができるという高い柔軟性を持っている。  浄化師の生命に関わる重大なデメリットと、それを受け入れても余りあるほどのメリットを併せ持つ魔喰器。  魔喰器という毒でベリアルという毒を制するのが、教団の、そして自力での救済を余儀なくされた人間の戦い方だ。  再び、教団本部訓練場。小休止を入れた指導役の教団員の元に、一人の教団員が真新しい書類の束を渡す。指導役の男は古傷だらけの腕や顔をタオルで拭うと、クリップで纏められた用紙を一枚ずつ捲っていった。 「対ベリアル戦闘訓練……もうそんな頃か」  男は遠くを見遣ってから、手元の書類に魔術でサインを入れていく。  対ベリアル戦闘訓練では、「ファントムトレース」と呼ばれる訓練用の軍事魔術によってベリアルの幻影を生み出す。それを相手に実戦形式の訓練を行う点が、通常訓練との最大の違いだ。  この魔術は幻影の戦闘能力や数を自由に調整できるため、参加人数に応じて最も効果的な条件下で訓練を行うことが可能だ。実体を持たない幻影の攻撃は、当たった箇所に魔力でマーキングを施すもの。この色の濃淡と着色部位から戦闘不能と判定された者や、装備に重大な異常があると判断された者は、即座にフィールドから強制離脱させられる。この際魔喰器に不具合があった場合は、訓練に同行する魔術鍛冶師が簡易調査と応急手当てを行うことになる。 「調整は俺も手伝うと伝えておいてくれ。新人を一人でも多く長生きさせたいのは、俺も同じだ」  指導役の男は確認を終えた紙束を教団員に渡すと、訓練の再開を宣言した。 「浄化師は教団にいる限り――いや、生きている限り、戦いから逃げることはできない。それなら戦う術を叩き込んでから、戦場に送り出してやりたいんだ。あいつらを最初のパートナーみたいな目に遭わせるのは、御免だからな」  男はベンチにタオルを放り投げ、口寄魔方陣で魔喰器と防具を再展開する。その顔には、大きな傷が走っていた。  指導役の男は、最初のベリアル討伐任務で最初のパートナーと右目を失った。原因は口寄魔方陣の展開ミスと戦術の調整不足。それを後悔し続けた彼はひたすら修練に励み、二人目の適合者に出会ってからは以前よりも慎重に、そして熱心にベリアル討伐任務に当たった。今ではその経験を買われ、新人浄化師たちの最終調整に臨時の指導役として呼ばれるまでになっている。  新人たちを自分と同じ目に遭わせたくない。その一心で彼は新人たちの訓練を引き受ける。そして今では、ある噂が教団内で囁かれるまでになった。「あの先輩教団員の訓練に参加すれば、どうも長生きできるらしい」と。  教団司令部1階、指令掲示板前。多くの浄化師が集うこの場所に、新たな指令が貼り出された。 「対ベリアル戦闘訓練 参加者募集中  詳細は司令部1階受付まで」  本格的な討伐任務を受ける前に、あなたとパートナーの命を預ける戦術や魔喰器の調整をしてみるのも悪くないかもしれない。
仲間と楽しむバーベキュー
とても簡単|すべて

帰還 2018-05-01

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
「こんなにぽかぽかしてて、お腹がいっぱいだと、眠くなってくるねえ……」 「は? もう腹いっぱいなの? まだソーセージもビールもたっくさんあるのに」 「食欲魔人のあなたと一緒にしないでよ」  あなたとパートナーのやりとりに、周囲にいる仲間達が、くすくすと笑った。 「もう、恥ずかしいっ」  あなたはパートナーの肩をパシリと叩き、湖近くに移動する。  パートナーはまだここで、食事を楽しむようだ。  それにしてもと、あなたは芝生に寝転がった。  今日はなんていい日なんだろう。  見上げる空は、見事な青。  見渡す景色は、木々の緑。  そして向こうでは、鉄板の上に野菜や肉、ソーセージが焼けている。 (そういえば、さっき食べたチーズも美味しかったな……)  この地に戦いがあるなんて、嘘のようだ。  身体を起こし、みんなを見れば、エクソシストの仲間達は、にこにこと笑っていた。  初対面のメンバーも多いが、これからともに戦っていく身、親しくなっておいたほうが良いだろう。 (そう、いつどんな任務に赴くかわからないんだから……。いつか、背中を任せることだってあるかもしれないし)  あなたは、また一同の輪に戻ることにした。  教皇国家アークソサエティの東南に位置するソレイユ地区、某所。  湖畔でのバーベキューは、のどかにのんびり、時間が過ぎていく。
ケルベレオン愛好家の失敗
普通|すべて

帰還 2018-04-30

参加人数 8/8人 oz GM
「浄化師の諸君! いいか、司令部教団員であるヤコブ・フェーンが君たちに命ずる」  なりたての浄化師たちは目の前にいる司令部の男性教団員に召集をかけられ、この場に佇んでいた。 「貴族の飼っていたペット――『ケルベレオン』が逃げ出し、憩いの広場をうろついている。住民に被害が出る前に生きたまま捕獲せよ!」  ヤコブ・フェーンは仰々しい言い方で浄化師に話しかける。 「以上だ! それでは諸君、頑張ってくれたまえ」  どこの広場にケルベレオンが現れたのか、住民に被害が出た場合はどうするのかといった情報もなく、さっさと退出するヤコブを慌てて引き留める。  あまりにも説明不足すぎた。  引き留められ、不機嫌そうに「……何だ?」とねめつける。 「逃げ出したケルベレオンはどこをうろついているんですか?」と尋ねると、 「そんなことも分からんのか。エトワールの東部にある貴族街に近い広場だ」  鼻を鳴らしながら答える。  浄化師たちは不満をこらえながら、住民に危害が出た場合、教団としてはどうするかを聞き出そうとすると、 「いかん! 住民に危害がでる前になんとしても捕まえるのだ! ルベッタちゃんに何かあったら私の責任になってしまうじゃないか!?」  ヤコブは泡を食ったように怒鳴り始めた。 「ルベッタちゃんを飼っている貴族はケルベレオン愛好家なのだ! 『かわいいルベッタちゃんを早く家に戻してちょうだい』と言われ、『私がやり遂げて見せましょう!』と大見得を切ったからには、なんとしてでもやらなければならんのだ」  どうやら貴族のわがままとヤコブの面目を守るために巻き込まれた浄化師たちはうんざりとしながら話を聞いていた。 「そもそもケルベレオンは爬虫類のような皮膚をした三頭の狂犬だ。主に館の門番や番犬として貴族や魔術師に飼われることが多いのは知っているな?」  知らないと答えれば、司令部の男性は得意げに「勉強不足だぞ」とにやにや笑いながら言うのが分かり切っていたので、黙って頷く。少し不満げな顔をしたもののヤコブは話を続ける。 「ルベッタちゃんが逃げ出したのは3日前だ。貴族さまが住んでいた屋敷からそう離れていない憩いの広場で目撃情報が多数上がっている。今のところ住民の被害も出ていない。元々ケルベレオンは怒らせなければ温厚な気質だ。それに認めたものにしか懐かない性質上、飼い主には忠実だからな」 「それなら何故逃げ出したんですか?」と何気ない問いに、ヤコブはあからさまに目を逸らしながら、ごほんとわざとらしく咳払いする。 「……鍵を閉め忘れていたそうだ」  その言葉に浄化師が絶句していると、ヤコブは視線を合わせることなく話を進める。 「その貴族は他にもケルベレオンを何匹か飼っていてな。ルベッタちゃんは最近飼い始めたばかりで、環境に慣らすために檻に入れていたらしいんだが、……不注意で鍵を閉め忘れていたらしい。最悪なことにまだ調教前で誰のことも主人として認めていないみたいでな。案の定、檻の中はもぬけの殻だ」  浄化師たちの物言いたげな視線に我慢ができなくなったのか、ヤコブは大きく咳払いし、早口でこう告げた。 「というわけで、貴族様からわざわざいらん恨みを買うわけには教団としてもいかん! 諸君らに、かかっているのだ。無事にルベッタちゃんを捕獲して送り届けるように、分かったな!」  それだけ言うと足早に司令部から立ち去ってしまった。  面倒事を押しつけられた君たちだが、指令を出された以上、浄化師として働かなければいけない。住民の安全を守るためにもケルベレオン捕獲任務を遂行しよう。
白と黒の妖精
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帰還 2018-04-30

参加人数 5/8人 井口創丁 GM
 ワタシがまた心から笑える日は来るのだろうか。  体長20cm、重さ1kgに過ぎない『ピクシー』と人間に呼ばれるワタシ達。  人間とは友好関係を築いていると言ってもそれは一面に過ぎない。  少なくともワタシは種族の壁を越えることなんて出来ないと思う。  例えば、ピクシーがアシッドに侵されベリアルと化してしまった場合人間は迷うことなくソレを排除するだろう。  そして人間は小柄なワタシ達を容易く屠った後、笑顔でこういうに決まっている。   「もう危険はありませんよ」  それは仕方の無いことだと言うことは、百も承知している。  なぜならベリアル化してしまった時点で助からないことが確定してしまっているのだから。  なぜならそれは人間にとってもワタシ達にとってもしなくてはならないことだから。  それでも、それでも心は人間を拒絶せずにはいられない。  なんで事前にアシッドに気付き対処できなかったのか。  なんで未だにベリアル化した生物を殺さずに元に戻すことが出来ないのか。  無理難題を言っているのは分かっている。  そんなものが出来たら苦労なんてしていないし、なんならワタシがやってのければいいだけの話だ。    分かっている。分かっているんだ、そんな簡単なことくらい。  それでも、ワタシの脳に焼きついた浄化師と呼ばれる人間を忘れることが出来ない。    奴らは迷うことなく父さんを灰に変えた。  いけない。自分を客観視するための例え話がいつのまにか自分を追い詰める暗い話になってしまっていた。  ワタシはそんな苦悩を何とか断とうと頭を左右に振り、藁を引き詰めたベッドに頭をうずめる。  こんなことをしても何も解決しないことは分かっている。  それでもせずにはいられない。  そんな中、聞きなれた声で呼びかけられた。 「ミレ、行くわよ」  藁から顔を離すと、そこには母さんがいた。  しかし、それは最早母さんではなかった。  見開かれた焦点の合わない目、皺で歪んだ顔の輪郭、そして何より三日月のように無茶な角度まで釣り上がった口角。  それは人間から『ヤレリー』と称される害獣の姿であった。  ワタシの両親は自他共に認める仲睦まじい夫婦だった。  それゆえに、父さんの死は母さんを狂わせるには十分な引き金となってしまった。  ヤレリーとなった母さんは毎日ワタシを連れて、同じくヤレリーとなってしまった同志の元へ行くようになった。  普段誰も近寄らないであろう森の端にある崖の近くの茂み。  そこで日々、ヤレリーたちは自身に降りかかった不幸を言い合い人間を憎む不毛な話し合いが行われている。  ワタシは集団から離れ、崖の真横にある木の上でひっそり座っていることしか出来なかった。    周囲の視線が突き刺さる。無理も無い。ワタシはまだ『ピクシー』なのだから。  どうしてワタシはヤレリーになれないのだろうか。  人間が好きだから? 仕方の無いことだと理解してしまっているから?  ……父さんを愛していなかったから?  その考えが出てしまってからワタシは自分自身に糾弾され続ける。 『心の無い悪魔』『愛を捨てた抜け殻』『不浄の怪物』『父殺し』  早朝から夕暮れまで続く不平不満の声の中、ワタシは更にワタシを苦しめ続ける。  気が付いたときにはワタシは木から落ちていた。真下には深い谷と川が見えた。  ピクシーを第一に想っていた筈のヤレリーたちはワタシが落ちていることになど気付く様子すらなかった。      全身がズキズキと痛む。  周囲は石と草木に囲まれていた。どうやら川辺に打ち上げられたようだ。  見える空と森からそんなに遠くまで流されてはいないことが分かる。  死ねなかった。  最初に脳裏をよぎったのはそんな感想だった。  次に全身を動かそうと力を込める。身体は痛みを伴ったが普段どおりの活動をしている。 「はぁ」  ため息が零れる。  きっとこれは幸運だったのだろうが、ワタシにとっては不幸でしかない。  まだ世界はワタシに苦しめと言うのだろうか。  空を睨みながら上体を起こす。 「ん!?」  思わず声が漏れる。  太陽の光を反射する川の水は、同時にワタシも映し出している。  そこに映ったワタシは母さん程ではないにしろ口角が邪悪に釣り上がっていた。 「やった! やった! やったぁ!」  これでワタシも認めて貰える。ワタシがピクシーを家族を父さんを愛しているって証明できる。  つい先程までの体の痛みはどこかへ消え、もう既にワタシはヤレリーの集会場へと飛び立っていた。    こんなに体が軽いのはいつ振りだろう。  羽が風を心地よく切り裂く。  体に残った水気が飛沫となって背後に飛び散り、小さな虹を作る。  崖の真下まで来たワタシは速度を上げ、垂直に飛び上がる。  ワタシはもう木の上で震えなくていいんだ。  気持ちはそのまま天まで昇ってしまいそうだった。  そして崖を越え、そのまま母さんのいる茂みの中へと突入……することは出来なかった。  茂みには紫色の靄がかかっていた。  その紫色は見たもの全てを拒絶する不快感の塊のようなものだった。  何より、ワタシはその紫色に見覚えがあった。  それは、死ぬ間際の父さんが纏っていたもの。  それは、全てをベリアルへと変えるもの。  それは、アシッドと呼ばれる史上最悪の瘴気。    茂みの内側から聞きなれた声がする。  しかし、その声が言葉を紡ぐことは無くひたすらに叫びをあげるだけだった。 「ギャァアアアァァァァアアアアァァァァ!!!」  それが母さんの断末魔なのかベリアルの産声なのかは分からない。  ただ、ワタシをその場から逃走させる合図としては申し分ないものであった。   「これが運命なのかな」  我武者羅に空を飛び、たどり着いた場所を眺めながらワタシは呟く。  狂い始めた元凶があるなら、狂いを終わらせるのもその元凶の仕事に違いない。  ワタシは理解できないほど堅く大きな建物の正門を潜りこう告げる。 「ヤレリー型のベリアル討伐を依頼します。それと――」  その建物には『薔薇十字教団』と言う文字が刻まれていた。   「――ワタシを殺して下さい」
思い出ラストノート
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帰還 2018-04-29

参加人数 8/8人 十六夜あやめ GM
 教皇国家アークソサエティの中心地、首都エルドラドから見て西部に位置する巨大都市エトワール。各地域の生産品を元に様々なお店が展開され、美術品や美しい建築様式などの芸術に富んでいる。市民階級から軍事階級、稀に貴族階級の者が好んで住んでいる中枢地区で、常に観光客で賑わっている街だ。  そんなエトワールの街を歩いていた浄化師の喰人と祓魔人。ふと、どこからか運ばれてきたのか、甘い香りが漂ってきた。嗅いだことのあるような匂いの元を辿っていく。すると、路地裏にひっそりと建つ、ガラス張りの建築物の前に着いた。どうやら香りの発生源はここのようだった。吸い寄せられるようにふらふらと建物の中へ足を進める。 ステンドグラスの扉を開けると、そこにはキラキラした空間が広がっていた。まず目に飛び込んできたのは天井からぶら下がるシャンデリア。多くの光源と光を複雑に散乱させるためのカットされた硝子が多数配列された、非常に繊細な装飾が施されている。次に、棚に丁寧に置かれたガラス瓶。赤や青、黄色や緑といった色とりどりの液体が入っている。大理石でできたカウンターには小瓶がずらっと並んでいる。そしてカウンターの奥にラベルの付いた無数のガラス瓶があった。天秤やすり鉢、スポイトやビーカーも置かれた工房のようだった。 「いらっしゃいませ。ようこそ『ラストノート』へ」  カウンターの奥の部屋から一人の女性が姿を現した。レース使いの花柄の服を着た柔らかい雰囲気を醸し出す女性は続けて言う。 「ここは香水を作る工房です。もしよろしければ香水を作ってみませんか? 現在体験教室を無料で開いているので。きっと素敵な思い出になると思いますよ」  店員が言うに制作時間はそんなに掛からず、作業も簡単らしい。  調香の手順としてはじめにイメージを描く。次に香料の種類を決定する。香料の配合を決定し、最後に調合・調香作業を行いイメージ通りに微調整して完成。  香りのタイプによって相手の好みやタイプを知ることができるらしい。  フローラル・ブーケなら花束のようないくつかの花の香りを混ぜ合わせた豪華絢爛な香りで女性に親しまれる。  オリエンタルなら甘味が強く、持続性のあるエキゾチックな動物性香料が効いた神秘的でセクシーな香りを身に纏える。  種類は11種類。ひとり一人の個性が出るそうだ。  まだパートナーと知り合って間もない浄化師にとってお互いをより深く知るいい機会かもしれません。  匂いや香りは記憶や思い出に深く関係していると言われています。忘れることのない、世界で一つの素敵な香水を作ってください。  あなたはどんな香りがお好きですか?
ヴァン・ブリーズの灯台守
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帰還 2018-04-29

参加人数 8/8人 久木 士 GM
 闇夜には光が、旅路には道標が。  そして船路を行く者には、光であり道標でもある灯台が必要だ。  ヴァン・ブリーズ地区は教皇国家アークソサエティ北部に位置する、海抜の低い土地が多い地域だ。この地区では国の南東部に位置するソレイユ地区と並んで農業が盛んだが、ブリテンで大量に消費される石炭を中心としたエネルギー資源の輸出によっても繁栄している。地区の住人は市民階級の者が大半で、彼らは中程度の生活水準で日々の暮らしを営んでいる。  ヴァン・ブリーズは海に面していることから、地区内には水に関連したレジャー施設が数多く存在する。そして海産物も豊富であることから、観光目的で地区を訪れる者も多い。  また、この地区では海運が盛んなため港が多く、航行する船舶の数も膨大だ。そのため灯台の数も他の地区に比べて遥かに多く、中でもとりわけ有名なものが『シェネフラウ灯台』だ。地区内の灯台は市街地から少し離れた場所にあり、周囲には人工的な灯りが全くない。そのため灯台周辺では、昼はどこまでも続く海、夜は満天の星空を眺めることが可能だった。  現在アークソサエティにある灯台の半数は、設置式の大型魔術道具によって光を生み出している。この「魔力化」とも言うべき革新は1700年に起こった『技術革新』によってもたらされた恩恵の一つで、アークソサエティの国力はこれによって飛躍的に増大、それに伴って人々の生活水準も国内各地で大幅に引き上げられた。  かつて国内の灯台では灯台守が火を焚き、それを一晩中燃やし続けていたが、現在の彼らの仕事は定刻の光源装置のチェックが主だ。薔薇十字教団で開発された技術を基にしたこの装置は、簡素な作りながらも信頼性は抜群で、エネルギー効率もかなり良い。装置に問題があればそれに対応したランプが灯って、その組み合わせによってトラブルの原因や種類の特定が可能だった。  光源装置は魔力を動力源としているものの、稼働によって生じる魔力や周辺環境への影響はごく僅かだ。そのため灯台がヨハネの使徒の誘蛾灯となることもなく、仮に魔力の暴走が起こったとしても被害はせいぜい装置が動かなくなる程度。そしてこの高い効率と安全性の代償として、灯台の1フロアを占有するほどの設備と定式陣が必要になっていた。  装置のメイン灯が動かなくなった場合はサブ灯が自動点灯する仕組みだが、それも使用できない場合は小型の補助動力源を用いた非常用光源への切り替えが行われ、後日教団本部に装置の修理を要請することになる。これは国内にある大型魔術道具を薔薇十字教団が管理しているためで、魔術道具の悪用・濫用を防ぐために必要な措置だった。  そして、場所は移って薔薇十字教団本部、司令部1階。指令掲示板前を眺めていたあなたたちは、ヴァン・ブリーズの灯台群に関する指令を見つけ、詳細を聞きにフロア内にある受付へ向かった。 「今月ヴァン・ブリーズ地区の灯台の一つで、光源装置の設置工事が予定されています。皆さんにはそこで、装置の試運転に協力していただきたいんです」  受付の女性教団員が、指令書の綴じられた分厚いファイルを読みながら答える。あなたたちが「どうして試運転に浄化師が必要なのか」と尋ねると、彼女は一人で何事か頷いたあと、あなたたちに笑いかけながら説明した。 「それもそうですね。では疑問にお答えしましょう。  灯台の光源装置が大型の魔術道具で、我が教団の管理下にあることはもうご存知ですよね。装置は大気中の魔力(マナ)を取り入れることで動力を得ていますが、この動力部が最大効率で安定して稼働するには起動から数日が必要です。装置には使い捨ての補助動力源も組み込まれていますけれど、魔力効率が悪くなった時はそれを使うより、直接魔力を送り込んだほうが早くて効率も良いんですよ。  ……それに、ここだけの話ですけど、この使い捨ての補助動力源が結構高くて。だから本当に『緊急用』なんです。それを何日も使ったら、教団の経理担当者が卒倒しちゃいますよ」  ということは、今回の任務では「相対的に安価な補助動力源」として務めを果たせばいいのだろうか。そう理解したあなたたちが受付の教団員に再び尋ねると、彼女はあなたたちの理解の速さを褒めて指令の概要を説明した。  指令に参加する浄化師は交代で夜間任務にあたり、灯台の光源装置の試運転に協力する。装置の魔力効率が落ちてきた場合は一定時間継続的に装置へ魔力を送り込むが、この際必要になる魔力はごく僅かなもの。浄化師の消耗は簡易的な魔術を使用する際よりも更に少ない。この「放出魔力量の調整」や「継続的な魔力の放出」という行動は新人浄化師たちにとって良い訓練になるので、優先して指令を掲示している。  装置の出力が低下する可能性があるのは、一晩に数度ほど。それまでは灯台の周囲の散策が可能で、問題があった場合は灯台守があなたたちに向けてランタンを振って教えてくれる。そして任務が終わった日とその翌日は、ヴァン・ブリーズでの観光が許可されている。 「もっとも当日は夜通し任務にあたった後ですから、宿に帰った後は昼過ぎまでぐっすり、でしょうけどね」  受付の女性は苦笑しながら答え、もう一日観光に充てられる日があれば良かったのですが、と申し添えた。 「ちなみに皆さまがどの魔力属性をお持ちであったとしても、この指令には参加可能です。光の色は装置で自動的に調整してくれますから」  それにしても彼女は、何故こんなにも灯台に詳しいのだろう。疑問に感じたあなたたちがそれを聞くと、彼女はやはり笑ってその質問に答えた。 「実家の父も灯台守で、小さい頃は私もよく手伝ったりしてたんですよ。今は兄が跡を継ぐため、故郷ブリテンで父に学んでいます。現在あちらでは蒸気式が主流ですけど、魔力と蒸気の複合式装置も出始めています。去年帰省した時は新品の複合式装置が来てたんですけど、うっかり魔力を注ぎすぎたら壊れて……あっ」  彼女は恥ずかしそうな表情をしてあなたたちから視線を逸らすと、慌てて手続き用の書類をカウンターに並べる。 「とっ、とにかくっ。これは難しい指令とか危険な指令じゃありませんから、安心して引き受けてくださいね。装置が壊れちゃっても、修理代は全部教団持ちですから大丈夫です。後でみっちり怒られますけど……。  それじゃあ、よろしくお願いしますね、浄化師さんっ!」  あなたたちは苦笑しながら書類を受け取り、必要事項を記入していく。少し大人びて見えた受付の女性の顔も、今では歳相応の眩しい笑顔で輝いていた。  休暇でもなければ戦闘でもないこの指令は、本当に地味なものだ。しかしこのような指令の解決も、人々の生活を維持・向上させるうえでは欠かせないもの。派手で分かりやすいものだけが浄化師の仕事ではないと、あなたたちは知っている。今は他の指令に備えて、力や経験を蓄えるときだ。あなたたちはそう考えて、この指令に参加する。  首都エルドラドからヴァン・ブリーズへ足を延ばし、都市の喧騒を離れてさざ波の音色に耳を澄ませば、日頃の疲れを忘れることができるだろう。そこでならあなたたちの心の距離も、また少し縮まるかもしれない。
お好み料理を作りましょう
簡単|すべて

帰還 2018-04-27

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 薔薇十字教団。  言わずと知れた、世界最大の魔術組織だ。  浄化師たちが所属している組織でもある。  教皇国家アークソサエティに本部を置き、各地に支部を持っている。  浄化師たちは、こうした薔薇十字教団の施設で普段は暮しているのだ。  例外的に、教皇国家アークソサエティの周辺であれば、教団施設内にある寮以外での生活も認められてはいたが。  とはいえ往々にして、大半の浄化師たちは教団施設での生活を送っている。  なにしろ、寮は男女別々ではあるが、全室個室。  衣食住が揃った生活ができ、指令もすぐに取りに行くことができる利便性まである。  生活するにも仕事をするにも、楽なのだ。  もっとも男女別々の寮は、パートナーの浄化師だろうと異性が訪れることは原則禁止されているので、一部の浄化師には不評であったが。  それはそれとして、教団施設は生活の場として十二分な場所なのだ。  そうした教団内施設のひとつに、食堂がある。  教団寮の一階にある食堂では、様々な民族料理を楽しむことが出来る。  たとえば、エスニック料理。  エビを使った酸味と辛味が特徴の『トムヤンクン』に、挽肉にエビや卵を加えて作る辛味のある焼き飯『ナシゴレン』や、茹でたエビや春雨に野菜など様々な物を米で作ったバインチャンと呼ばれる薄い皮で包んだ『ゴイクン』などなど、様々な料理が用意されている。  他にもさまざまな料理が用意されているが、問題がない訳でもない。  教団は、浄化師の才能がある人間を各地から本部や支部に集めているのだが、それは様々な出身地からのものだ。  当然、それぞれ親しんだ味がある。  そうでなくても、味の好みは千差万別。  偶には自分の故郷の料理が食べたい。  あるいは、用意されている物ではなく、自分の好みのものが食べてみたい。  なんて意見が出て来るのだ。  それは仕方がないことではあるが、だからといって食堂の職員としては困りものだ。  一体どんな料理を作れば良いのやら?  そうして思い悩んだ上で、一つの考えが。  いっそのこと、食べたいものを浄化師に作って貰えば?  それぞれの故郷の味や、あるいは自分の得意料理。  そうしたものを作って貰い、それを参考に食堂のメニューを考えていこう。  ある食堂職員の意見に皆は賛同し、浄化師に依頼が出されることになりました。  内容は、食堂の新メニューの参考にするために、何か料理を作ってみて欲しいとの事です。  材料や調理の場は提供してくれるので、腕を披露するのみです。  この依頼に、アナタ達はどうしますか?  依頼なので、普段は作れない絢爛豪華な料理にチャレンジしてみますか?  それとも故郷の味や、自分の得意料理をパートナーの浄化師に振る舞ってみても良いでしょう。  パートナーと料理を通じて交流するのも一興です。  場合によっては、他の浄化師と一緒に料理を作ってみるのもアリでしょう。  皆さんの料理の腕を、振るってみて下さい。
噂の幽霊屋敷
普通|すべて

帰還 2018-04-27

参加人数 8/8人 狸穴醒 GM
●ある労働者の話  広場に面した酒場は、仕事を終えた労働者たちで賑わっていた。  高級な店ではない。料理の匂いと煙草の煙がたちこめる中を、ジョッキを携えた娘たちが行き交う。  客同士が語り合う声は大きく、時折けたたましい笑い声が響いた。 「聞いたかよ、隣町の先週の事件!」  大ジョッキのビールを飲み干して、商店で働く男が言う。  答えるのは宿屋の下働きの若者だ。 「知ってますよ、あれでしょう?」 「何の話だ?」  同じテーブルの客は事情を知らないらしい。  商店員と宿屋の下働きは顔を見合わせてから、わざとらしく声をひそめた。 「終焉の夜明け団ですよ」 「そうそう。薔薇十字教団がアジトを摘発したんだとさ!」 「身体に十字架を埋め込んだ連中が、10人以上も捕まったらしいですよ」 「その話なら俺も聞いたぜ」  別の客が話に加わった。 「まだ何人か信者が逃げてるんじゃなかったか?」 「そうらしいな。案外、まだそのへんに信者がいるかもしれないぜ」 「やだぁ、怖いわねぇ」  酒場の娘が客に同調しながらジョッキを並べていく。  男たちはひとしきり終焉の夜明け団の悪口を言ったあと、別のニュースへと話題を移した。  その賑やかなテーブルを背にして、カウンター席にひとりで座る男がいた。  他の客同様に服装は質素だが、この店で一番上等の料理をつまみにビールを飲んでいる。 「今夜はずいぶんご機嫌だねぇ。いいことでもあったのかい?」  店主がカウンターの中から男に声をかけた。 「おお、わかるか! 仕事がうまくいったんで給金を弾んでもらったんだよ」 「それは何よりだな」 「頑固者の親方に褒められてなぁ。いやぁ、生きてるとこういうこともあるもんだ」  嬉しげに言って男は酒を追加する。ジョッキにビールをつぎながら、店主が釘を差した。 「飲みすぎるなよ。あんたの家、不気味なお屋敷の前を通るだろ。帰り道には気をつけな」 「なんの、まだまだ!」  結局、男が店を出たのは夜半近くだった。鼻歌混じりに帰路につく。 「ふんふんふふーん……なべて世はこともなし、とねぇ」  彼の家は路地の奥である。  あたりは古い住宅地で、ガス灯も少なく暗い。男のほかに通行人はいなかった。  男は路地に入った。  生い茂った木々が路地にはみ出し、視界を遮っている。  木々の奥には、長いこと放置された屋敷があるはずだった。  千鳥足で歩きながらふと視線を上げたことに、特に理由はない。  荒れ放題の屋敷は暗闇の中で黒い塊と化し、建物と庭木の区別もはっきりしなかった。 「……ん?」  そのとき、男は見た――ぼんやりした光が、屋敷の庭木の間に揺れるのを。  男は魅入られたように光を見つめた。  そのうち光は何かに導かれるようにふわふわと動き、円を描く。  そうして、かき消すように見えなくなった。  どこかで野良犬が遠吠えをしている。  男はしばらくそこに立ち尽くし、光が消えた方向を眺めていた。 「……幽霊?」  やがて彼は我に返ると、一目散に逃げ出した。 ●指令 「今度の指令はブリテンのさる地主からの依頼で、妙な噂のある空き家を調べてほしいというものです」  指令書を見て集まった浄化師たちに、薔薇十字教団の団員が説明をする。 「空き家の敷地内で、人魂のようなものが何度も目撃されているとか」  目撃者の階級はバラバラだが、皆ごく真っ当な市民のようである。 「皆さんは問題の空き家内部を調査し、市民に危険が及ぶ可能性があるようなら排除してください」  要するにこの指令は、幽霊屋敷の調査ということらしい。  生物が死ねば、魂は天国または地獄へゆくと言われている。  しかし何らかの理由で魂が地上に留まり、幽霊となって怪奇現象を引き起こすこともあるというが―― 「幽霊はもちろんですが、街中とはいえベリアルが入り込んでいる可能性もあります。くれぐれも油断は禁物ですよ」  真面目くさって団員は言った。 「それと、依頼人は屋敷の安全が確認できたら清掃して貸し出したいようです。むやみに家を傷める行為は避けてくださいね」