《悲嘆の先導者》フォー・トゥーナ Lv 41 女性 ヒューマン / 墓守


司令部は、国民から寄せられた依頼や、教団からの命令を、指令として発令してるよ。
基本的には、エクソシストの自由に指令を選んで問題無いから、好きな指令を受けると良いかな。
けど、選んだからには、戦闘はもちろん遊びでも真剣に。良い報告を待ってる。
時々、緊急指令が発令されることもあるから、教団の情報は見逃さないようにね。


【海蝕】名前を呼んで
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帰還 2018-07-10

参加人数 8/8人 瀬田一稀 GM
 ベリアルの出現は確認されていないが、万が一のときに備えて、エクソシストの警備が必要。  そう言われ、あなた達は、ベレニーチェ海岸を訪れた。  ――と。  話しかけてきたのは、一人の女性。 「やあ、エクソシストさん! フェアリーブを飲まないかい?」 「フェアリーブ?」  首を傾げたあなたに、女性は液体が入ったコップを差し出してくる。 「ミルーチェっていう果実から作られたカクテルだよ。これを飲むと、素敵なことが起こるのさ」  とろりとした琥珀色の液体は、甘いのに爽やかで、いくらでも飲めてしまいそう。 「おい、そんなにごくごく飲んで大丈夫か?」 「平気よ。だってこんなに美味しいんだもの」  あなたは答え――目の前にいる女性の顔が、ぼやけて見えることに気がついた。 (なに、これ……)  頭と体がふわふわする。 「おいっ!」  パートナーが支えてくれたおかげで、なんとか倒れることはなかった、けれど。 (なんか変な感じ……)  あなたは、「ねえ」と呼びかけようとして、自身の声に驚いた。 (えっ、なんで……彼の名前しか呼べないの!?)  ※ 「大事な人の名前しか、呼べなくなる……?」  女性から果実の説明を聞き、パートナーが目を丸くした。 「なんだそれは……」 「ミルーチェっていうのが、不思議な効果がある果実なんだよ。まあ、今飲んだのはコップ一杯程度だし、一時間もすれば元に戻るから、心配はないさ」
指令を終えた帰り道
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帰還 2018-07-10

参加人数 8/8人 oz GM
 夜を含んだ茜色の残映。一日の終わりを告げるように日が暮れていく。夜の帳が二人を覆おうとしていた。  あなたたちは、ようやく指令から解放され、教団へと帰ろうとしていた。  教団へと帰る際に通り過ぎる道は、まだ人も多く賑わっている。行きかう人々を横目に外灯に照らされた路地を進む。それとは正反対に、あなたたちは互いに会話もないまま気まずい空気が漂っていた。  あなたは今回の指令の際に失敗してしまい、パートナーに迷惑をかけてしまった。自分がやってしまった失敗に落ち込み、パートナーまで巻き込んでしまったことを思うと心が重い。  隣を歩くパートナーを横目に見ると、いつもより精彩に掛け、疲れた表情を浮かべている。そんなパートナーにあなたは罪悪感が募るばかりだ。  パートナーは早く教団に戻りたがっているように見える。心なしかいつもよりも歩くのが速い気がする。  しかもタイミングが悪いことに未だにパートナーに謝ることができていなかった。指令時はそれどころではなく、パートナーは自分の失敗のカバーに追われていて、謝ることもお礼を言う機会も逃してしまっていた。  今のうちにパートナーに謝るかお礼を言わなければ。時間が経てば経つほど言う機会を逃してしまうだろう。  あなたはパートナーに素直に謝ることができるだろうか。パートナーはどんな反応をするだろうか。迷惑をかけた自分を許してくれるだろうか。こんな自分がパートナーでいいのか。  そんな様々な不安が喉の奥からこみ上げそうになるのを押さえ込みながら、意を決して、パートナーに話しかけるのだった。
ルネサンスの光と影
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帰還 2018-07-08

参加人数 8/8人 久木 士 GM
 1718年6月某日、ルネサンス地区ヴェネリア。密命を受けてこの地を訪れていた薔薇十字教団の要人が1名、何者かによって誘拐された。  幸か不幸か、その時ルネサンス地区に滞在していたあなたたちは教団からの招集を受け、事件翌日にヴェネリアのとある宿を訪れた。そこは表向きは普通の宿だが、従業員は全員が教団の関係者。教団員にとってはこの上もなく安全な場所だった。あなたたちが案内された一室は厚手のカーテンで窓を遮られ、簡素な壁掛けランプの薄明かりがあるのみだった。薄暗い室内では、一人の男があなたたちを待っていた。 「あんたたちが、迷子探しを手伝ってくれる浄化師さんか」  目深に被った帽子と影のせいで顔はよく見えなかったが、男はいくらか年を食っているような声をしていた。服装はヴェネリアのどこにでもいるような観光客そのものだが、彼こそがこの指令に関係する人物なのだろう。あなたたちが自己紹介をしようとすると、男はそれを遮る。 「お互いの名など知らんほうがいい。それがお互いの為でもある。どうしても呼び名が必要なら、クヴァレと呼んでくれ。素性は明かせんが、教団の協力者とだけ言っておこう」  クヴァレと名乗った男は、あなたたちに事件やルネサンス地区についての説明を始めた。  ヴェネリアは100以上の島々が、およそ400の橋と150を超える大小の運河で結ばれて成り立っている水上都市だ。水面に浮かぶマーケットや満潮時に水で満たされる広場など、非日常的な街並みを見るために多くの観光客が訪れる。  ルネサンスは美しい土地だが、地区の南北で貧富の差が著しく、その経済格差はアークソサエティ国内でも類を見ない程だ。北部は国内随一のエネルギー資源埋蔵量を誇り、その採掘を中心として経済が潤っている一方、地区の南部に目立った産業は無い。農業を主産業としてはいるものの、貧しい南部はほぼ全域がスラムと化している。そこに住むのは、そのほとんどが奴隷階級層。観光で賑わう北部と違って、ここへ近寄る者はそう居ない。ヴェネリアには裕福な観光客を狙うならず者が少なからず存在するが、そのほとんどがルネサンス南部の出身だった。  誘拐された要人が連れていたのは、護衛の浄化師1組と補佐役の教団員1人という必要最小限の人数。一行が路地に入ると、突如として魔術「ノワールバインド」が行使された。護衛は即座に抵抗を試みたが、続けざまに放たれた攻撃魔術によって倒れる。そして補佐役の教団員と要人だけが残されると、何者かが補佐役の後頭部を殴打して気絶させた。彼が目覚めると、瀕死の重傷を負った浄化師の近くに1枚の紙が置かれていたという。その紙には、こう書かれていた。  ――奴隷制を容認する教皇と、国家の走狗たる薔薇十字教団に、我々は鉄槌を加える。  我々は『リバティ戦線』。奴隷を解放し、遍く人類の平和と平等のために戦う者である。 「戦線のろくでなしどもはルネサンスにも多く居る。中には学のある奴も居るだろうが、連中の大半は貧困層か元奴隷だ。こんな手の込んだ代物を作れるのは、戦線のごろつき共よりもっと性質の悪い連中――『終焉の夜明け団』とか『サクリファイス』とかの、正真正銘の屑どもだ」  声明文を読み終えたクヴァレは、二つの組織の名を口にした。それを聞いたあなたたちは思わず身構える。終焉の夜明け団といえば、魔術の開祖たる『アレイスター・エリファス』を崇拝し、彼の復活を目的とする狂信者の集団だ。もう一方のサクリファイスは「人間は滅びを受け入れ、世界救済のための生贄になるべきである」という思想を持っていて、人類の作り出したありとあらゆるものを破壊するため、世界各地でテロ行為を画策・実行している。そんな集団が関わっているとなると、穏便に事を済ませることはできないだろう。 「迷子の要人だが、ヴェネリアで『魔導書』が発見されたとの情報を受けて調査にあたっていたそうだ」  魔導書。アレイスター・エリファスが遺した『法の書』から派生した魔術について記され、高名な魔術師によって手がけられたもの。現在浄化師が使っているアライブスキルは、ここに記された魔術を改良して生み出されたものだ。教団と終焉の夜明け団は、魔導書を巡って今も多くの血を流している。 「魔導書捜索の一行は、誰一人として制服を着ていなかった。そんな連中が襲われたとなると、事情については察しが付くはずだ」  あなたたちは頷く。普段着の一行が襲撃されたのならば、彼らは後をつけられていたか、もしくは魔導書の情報自体が偽物だった可能性が高い。であればこの襲撃も、事前に計画されたものと考えてよさそうだ。  クヴァレは背広の内ポケットから小瓶を取り出し、それを左右に小さく振る。どうやら魔術道具の一種らしく、しばらくすると中に冷たい明かりがぼんやりと浮かび上がった。その青白い光に照らされて、机に置かれたヴェネリア市街地の地図が見えた。地図には数本のピンが刺してあり、一番大きなものは倉庫の場所に立っていた。 「連中のねぐらは粗方見当がついている。浄化師さんには、そこで隠れている首謀者の確保を頼みたい」  彼の説明によれば、あなたたちの行うべきことは、まず第一に首謀者の身柄の確保だ。敵はリバティ戦線を名乗っており、戦線に所属する者たちが現れる可能性がある。首謀者たちが潜伏していると思われるのは、入り組んだ路地の奥にある古い倉庫。天井が高く、一部は二階建てになっているため、首謀者はほぼ間違いなく倉庫上部に陣取っているはずだ。下層には空の木箱が積まれている場所もあるが、魔術による攻撃を防いでくれるのは一度きりだろう。  倉庫上層に行くための階段は、倉庫左右に1つずつ。何段あるかは分からないが、上る際は攻撃の集中が予測される。囮を用意するか防御系の魔術を用いるかなどして、極力被弾を避けるべきだろう。上層に辿り着いた後は首謀者と戦うだけだが、襲撃の際に行使された「ノワールバインド」を含む魔術や定式陣など、罠が仕掛けられていないか注意する必要がありそうだ。  要人の救出を成功させるためには、何にも増して迅速な行動が必要になる。首謀者がサクリファイスに所属していた場合、その人物はあなたたちが倉庫に突入した瞬間、要人を生贄にするための行動を開始するはずだ。倉庫下層にリバティ戦線の兵士が居る場合は、彼らを無視するか最短の時間で片づけてしまうべきだが、その場合は上層での戦闘がより厳しいものとなるだろう。ともあれ、要人救出を実行するかどうかも含め、全てはあなたたち次第だ。 「倉庫には俺も同行させてもらうが、生憎と魔術が使えなくてね。下層で下っ端どもを片付ける手伝いをするか、攻撃魔術の囮になるかがせいぜいだろう。足には自信があるからな、多少はあてにしてくれても構わんよ」  クヴァレはにやりと笑い、倉庫内ではあなたたちの指示に従うことを約束する。首謀者との戦いに本当に参加しなくていいのか尋ねると、彼は声の調子を落として答えた。 「俺達の目的は、連中を挙げることだけだ。それができるんなら、手順や道筋はどうだって構わん」  帽子の下から覗いた彼の瞳は、狼のように鋭かった。クヴァレは帽子を被り直すと、あなたたちに地図の写しを渡す。決行は翌日の深夜。あなたたちはそれに備え、宿に集まった仲間たちと計画を立て始めた。
破戒の聖女
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帰還 2018-07-06

参加人数 8/8人 黒浪 航 GM
 ある満月の夜、人里離れた森の中にある苔むした廃墟の中に、その女はいた。  年の頃は、おそらく二十代前半。艶やかな銀髪に、透きとおるような白い肌、月光を思わせる淡い金色の瞳には、思考の窺い知れぬ深遠な光が宿っている。  着古した修道服でも隠すことのできぬ、類まれなる美貌と煽情的な肢体。しかし、その美しさは、目にする者の心にかすかな不安と狂気を植え付ける、ある種の『魔性』を感じさせた。 「うつくしきこと……つよきこと……」  冷たい石壁に囲まれた部屋にひとり立つ女は、緋色の光を放つ両手を掲げながら、低いつぶやきを洩らしている。  女の眼前の床には、二匹の大きな獣――若い雌のオオカミと雄のタカが横たわっている。どちらも、いまは魔術か、あるいはクスリの力で眠らされているようだ。 「正しきこと……罪深きこと……」  女は、目を細め口の端をかすかに動かした。しかし、そのとき彼女が一瞬みせた表情が、悲しみなのか、それとも喜びなのか、容易に判断することはできない。 「……………………」    やがて――、女は呪文を唱えはじめた。  しかし、ただの呪文ではない。  その忌まわしく、恐ろしい呪文は、異なる二匹以上の生物を無理やり合成させてキメラを生み出す禁忌魔術――ゴエティア。 「………………」    まもなく女が呪文を唱え終えると、床に横たわっていたタカとオオカミは、音も無く地面より湧き出てきた血の色の煙に包まれた。  そして、次の瞬間、その煙の向こうから、無数の骨が砕け、肉が裂けるおぞましい音が聞こえてきた。  断末魔の絶叫は、ない。  犠牲となる獣を前もって眠らせていたのは、女が与えたせめてもの慈悲だろう。    数分後――、あたりがふたたび夜の静寂に包まれ、魔力が部屋から溶け消えたあと、己の魔術によって誕生させたあらたな『生命』を目にして、女は、はっきりと笑みを浮かべた。  しかし、そのとき女が蠱惑的な微笑の裏に隠していた感情は、けして読み取ることはできなかっただろう。    一般的に、ゴエティアによって生み出されたキメラは、そのほとんどが術者も手が付けられないほど凶暴化する。  しかし、この、仔馬ほどの大きさの漆黒のオオカミに、赤黒いタカの翼と羽毛をつけたような外見のキメラは、女を自分の主人、あるいは母親だと認識しているのか、彼女の前では忠実な猟犬のように大人しくしている。  おそらくは、女の操る魔術の完成度が非常に高く、また、彼女自身が生まれ持つ魔力がおそろしく強大であるためだろう。 「さあ、いきましょう……」  女は、キメラを連れてしずかに部屋を後にした。  だが、廃墟を出た瞬間、女は意外なモノを目にした。 「あら……?」  木々の間に並んで、女を見つめているのは、紛れもなく教団の浄化師たちだ。 「見つかってしまいましたわね」  女は、たいして驚いた様子もなく、他人事のようにいった。    女がこの廃墟でキメラを生み出したのは、じつは今夜がはじめてではない。  これまでにも森の獣たちを使って何体ものキメラを合成し、そして、それらすべてを野に放ってきた。  彼女が生み出したキメラが、近隣の村や町で家畜などを襲っているのは知っていた。だから、キメラ討伐の依頼を受けた浄化師たちが、そのうちこの廃墟へたどり着くこともわかっていたのだ。 「……いきなさい」  女は、浄化師たちを睨んで歯を剥き出し、唸り声をあげているキメラを見あげて、やさしい声でいった。  キメラは、女を一瞥したあと、浄化師たち目掛けて勢いよく跳躍した――。 
オルヴワルの読書大会
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帰還 2018-07-04

参加人数 8/8人 内山健太 GM
 エトワールの中心街には、リュミエールストリートというメインストリートが存在している。  主に歓楽街として有名なのだが、今、本好きに熱い支持を集めているイベントが存在している。  エクソシストの中には、魔術を研究する関係上、書物を読み込む人間が多い。当然、読書量は増え、本の虫となっているエクソシストも多いようだ。教団の図書館を利用するケースが多いが、実際に自分で本を購入する場合もあるだろう。そんな本好きのためのイベントが、リュミエールストリート内のフリーマーケット「オルヴワル」に存在している。  オルヴワルは主に蚤の市を行っており、多様な物品を販売しているのだ。  そんな中、貸し出した本を中心に、読書を行う「読書大会」が、最近になって行われるようになったのだ。世界各国のさまざまな古書を中心に、魔術関連の書物なども貸し出して、多数読めるようになっているようである。  そのため、今密かに本好きのエクソシストたちや、読書家の間で、この読書大会はブームになっている。読んだ本の感想を言い合うなど、楽しめるのだ。  そんな読書大会が今回もまた開かれようとしている。あらゆる国々の商人が、自慢の古書を持ち寄っているだけあって、規模も大きいようである。きっと、珍しい本や、楽しい本などが読めるだろう。  読書大会は、主に早朝から開かれている。読める本も多岐にわたり、民話を集めた民話集や、伝奇や伝承物語、魔術関連の書物、個人が制作した文芸誌、技術の粋を凝らした豆本など幅広くある。もちろん、人気の小説なども読めるようになっているので、読書が趣味という人間にはうってつけのイベントである。人気の本や希少な本などは、早くに貸し出されてしまうので、楽しむのであれば早朝から向かうとよいだろう。  オルヴワルの近隣には繁華街も多く、読書以外にもカフェやレストランなどで楽しむのもアリだろう。主に本好きのためのイベントと思われているが、本が好きな人間以外にも楽しめるようになっている。商人は、自分の知識を武器に本の魅力を伝えてくれるし、おすすめの本や話題になっている本、読んでおいて損のない本など、幅広い視点で教えてくれるので、本の知識がない人たちでも楽しめるのである。  本が好きなエクソシストならば、より一層楽しめるであろう。一日中、読書大会を楽しんでもいいし、少しだけ商品を見て、読書大会の雰囲気を楽しむのも一興である。  束の間の休日を、読書大会で楽しんでみてはいかがだろうか?
ダンジョンに挑戦しようLv1
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帰還 2018-07-04

参加人数 8/8人 春夏秋冬 GM
 教皇国家アークソサエティの中でも、ひときわ人口が多い場所のひとつであるエトワール。  その中心街であるリュミエールストリートに、冒険者ギルド「シエスタ」はあった。  ギルドとは言っても、そこは酒場を兼ねた情報交流の店といった風体である。  なにしろシエスタの始まりは鑑定士や情報屋、そして酒場の店主が同業者組合として組織化したものなのだ。  杓子定規に整然と、なんてものはない。  猥雑に乱雑に、明日の成り上がりを夢見てエールを一杯ひっかける。  そんな逞しくも胡散臭く、賑やかな空気をみなぎらせた場所である。  周囲を見渡せば、テーブルを囲んで雑談をする者達が見て取れた。  冒険者だ。  仲間と冒険で得た報酬を肴に酒盛りをする者が居れば、とんだ骨折り損のくたびれもうけだと愚痴をこぼすものも居る。  成功と挫折が入り混じり、高揚した気配が漂っていた。  その一角、4人掛けのテーブルで、冒険者とギルドの紹介業者が商談を始めていた。 「浄化師と一緒に、虚栄の孤島に行けってこと?」  耳に聞こえの良い朗らかな声で、自称冒険者であるセパルは聞き返す。  相手は冒険者ギルドの情報屋であり紹介屋でもあるクロアだ。  50そこそこの漂々とした気配を漂わせているクロアはセパルに返す。  「悪い話じゃないでしょ? 人手が欲しいって言ってたじゃあないですか」 「言ったっけ?」 「言いましたとも」  にぃっと笑みを浮かべクロアは返す。  油断ならないタヌキおやじといった風体のクロアの笑みは、どう見ても何か企んでいるようにしか見えない。  これにセパルは、肩をすくめるように息をつく。  見た目は20そこそこの見目良い美女といった姿をしているセパルだが、そこは百戦錬磨の冒険者。  なによりクロアとは長い付き合いだ。  クロアが話を持ちかけて来る時は何かを企んでいると、よく知っているし慣れている。 「今回は何の悪だくみ?」 「おや、これは心外ですな。騙そうとしているとでも?」 「違ったの?」 「もちろんですよ」 「ふ~ん。じゃあ、ボク達に話してないことは?」 「ありますよ」 「あるんじゃん」  呆れたようにため息をつくセパルに、クロアは目を笑みで細めながら返す。 「依頼内容を確かめるかどうかは冒険者の勝手ですよ。聞かれれば話しますとも」 「確かめもせずに食いついたのが、どうなろうと知った事じゃないってことね。まぁ、いいけど」 「ふふ、そこは自業自得ってことで」 「あいにくと契約書はしっかりと目を通す主義だから、ボクたちは」  セパルの言葉に、同じテーブルについていた2人の自称冒険者な仲間が静かに頷く。  1人はセパルと変わらない年頃に見える涼やかな美女であるセレナ。  もう1人は、20代半ばの厳ついにぃちゃんといった見た目のウボーという男性だ。 「どういう依頼なのか、ちゃんと話してね、クロさん」 「ええ、聞かれれば話しますよ」  漂々と笑みを浮かべながらクロアは応える。 「最近、教団の方でダンジョンが解放されたのは知ってるでしょう」 「ああ、封印の魔宮ってヤツ?」 「ええ、そうですよ。大分賑わっているようで」 「そうなんだ。でもアレってさ、浄化師じゃないと荒らしに行けないでしょ?」 「まったくもってその通り。こっちにも、おこぼれのひとつも欲しい所です」 「だから、こっちはこっちで他所のダンジョンを探ろうってこと?」 「ええ。だから虚栄の孤島なんてのは、適当だと思いませんか?」  いまクロアとセパルが話題にしている虚栄の孤島はダンジョンのひとつだ。  かつては孤島ながらも小さな国として栄えていたが、今では人口が減り滅んでいる。  人の手付かずでいたせいか自然豊かな場所だ。  場所によっては、魔法使いにより作られたというゴーレムやトラップが今も生きており、荒らす者を撃退するという。 「貴女達は、何度も訪れて詳しいでしょう?」 「それなりにはね。だから浄化師を案内しろってこと?」 「ええ。ゴーレムやトラップのある危ない場所にお願いしますよ」 「……ああ、そういうこと」  クロアの言葉にセパルは納得する。 「浄化師に危ない物は掃除して貰って、残りの美味しい所は頂いちゃおうってわけだ」 「人聞きの悪い。仕事に見合った報酬は教団の方に支払ってありますよ」 「でもさ、目の前にお宝があったら、つい手に取っちゃう浄化師も居るんじゃない?」 「ええ、まさにそこで。そうならないようお目付け役が要る訳ですよ」 「……つまり、案内犬と番犬の両方をしろってことね」 「その通りです」  にこにこと笑みを浮かべるクロアに、セパルは小さく息をついて返す。 「分かったよ。ボク達のやることは、ひとつは浄化師を案内して危ない物を掃除して貰うこと。ふたつ目はそこで手に入りそうなお宝を浄化師に持ち逃げされないようにするって事で良い?」 「ついでに2つして下さいな。道中のマッピングと、持ち帰れそうなお宝があれば持って帰って下さいな。私の方で高く買わせて貰いますよ」 「……マッピングした地図を売ってもうけようとしてない?」 「もちろんですよ」 「……まぁ、いいけどね。じゃ、折角だから試練の塔に連れて行こうかな」 「試練の塔?」  初めて聞く単語にクロアが聞き返すとセパルは応えた。 「虚栄の孤島の西にあるんだよ。森に囲まれた塔なんだけどさ、5人以上いないと中に入れないんだ」 「それはまた、面倒な場所ですね」 「作った魔法使いが面倒臭いヤツだったから。仲間みんなで協力プレイ、とか言ってたらしいし」 「見てきたように言いますねぇ」 「それだけ調べてるってこと、こっちは。探すの大変だったんだよ、その魔法使いが残した日記探すの。それよりも、他に話してないことはない?」 「ありませんよ。あとはせいぜい、貴女達が手に入れた情報を売りさばいて儲けさせて貰うくらいですよ」 「それは好きにして。じゃ、商談成立ってことで」  そんな話し合いがあった数日後、教団に依頼が舞い込んできました。  ダンジョンのひとつである虚栄の孤島。  そこにある試練の塔に冒険者を同行して探索して欲しいとの事です。  探索して得られた物は冒険者が持ち帰るとの事ですが、その分報酬には上乗せられているとの事でした。  この依頼にアナタ達は――?
夜空に星河、傍らに君
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帰還 2018-07-02

参加人数 8/8人 あいきとうか GM
 七夕。  もともとは東方島国ニホンの禊の行事だったそれが、教皇国家アークソサエティに入ってきたのはいつのことだったか。  教皇国家アークソサエティのソレイユ地区に伝わっていた類似の伝承と混じりあい、今では東方島国ニホンの風習に準じる形をとり、各地区で祭りが催されるようになった。  すっかり夏の風物詩となったこの行事は、ソレイユ地区ほど盛り上がってはいないにせよ、中心部から北に位置するヴァン・ブリーズでも開催されている。  あなたとはパートナーは七夕のこの夜、ヴァン・ブリーズ有数のデートスポットであるシェネフラウ灯台の警備を任されていた。  顔を上げれば、夜空に無数の星がきらめいている。中でも目立つのは真っ白な星群、天の川だ。ズラミスとサラミという仲睦まじい夫婦が、死後に別々の場所で星となり、どうしても会いたいからと星屑を集めて作ったのが天の川だ、といわれている。  海岸に建つ灯台の近くには、星を模した砂糖菓子や氷菓子を売る露店がぽつぽつと開いていた。日ごろはにぎわう場所ではあるが、今夜ばかりは祭りの中心地であるソレイユ地区から離れているため、人気も店も少ない。  だが、その分だけ静かに満天の星を眺めることができる。  警備といっても、喧嘩は起こらず敵襲の気配もない。  これってもしかして、デート?
雨の日は、きみと
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帰還 2018-07-02

参加人数 8/8人 GM
 連日の指令漬けで、疲れ果てた肉体を呼び覚ます音がする。  見慣れた自室の天井。  目が覚めて、鼓膜に響くのは、しと、しと……雨音。  なんだろうと怪訝に思ってカーテンをひけば、外はあいにくの曇り空。そこから糸のような雨が零れ落ちている。  一つの指令を終えて教皇国家アークソサエティにもどってきたのだが……新しい指令をと思ったのだが 「ほぉ、ここ連日、働きづめじゃないか~。うむうむ。二人して疲れた顔をしちゃいかんなぁ。もちろん、君たちに頼みたいことはいっぱいある。が、しかし、今回はこれだ。ずばり! 自分たちの肉体をしっかりと休めなさい!」  びしっと受付口の男は微笑んだ。 「今日の指令はひとつ! 自分たちを大切にして、そしてちゃんと指令にあたること。ささいなミスが命とりになる可能性もあるんだから~。そうそう、こんなチラシをもらったから、どーぞ。では、今日一日、しっかりリフレッシュしてちゃんとした顔でここにくるように!」  差し出されたチラシは、「雨の日限定ショップ【レイン】」。  なんでも雨の日が楽しくなる雨具を売っている店だそうだ。  傘や長靴に合羽……小物のアクセサリーも取り扱っているそこは奥側がカフェになっていて、お買い物で疲れたらおいしい飲み物とケーキを食べることもできる。  雨の日だったら家でゆっくり過ごすのもいいし、たまりにたまっている家の掃除を片付けようか、最近忙しく読めなかった本を読むのもいいかもしれない。  それに教皇国家アークソサエティにはさまざまな観光名所が存在する。  植物園、水族館……あげたらキリがない。  指令にいそしむばかりで、そんな近場へと足を向けてもいなかったかもしれない。あいにくの雨でも、いいや、雨の日だからこそ静かに、満喫できる可能性はとても高い。こんな日だからこそ出かけるというのもひとつの手だ。  今日は雨。  自分もパートナーも一日――【疲れた自分たちを癒すこと】と指令をもらっている。  雨に濡れることも厭わず好きに出歩くのもいいかもしれない。家のなかでまったりと過ごすのだって構わない。  今日はどうしよう。  早速相談しよう。
アジサイが彩るカティンカの夏至祭
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帰還 2018-06-30

参加人数 8/8人 鳩子 GM
●黄昏の世界を生きる  本来、祭とは神を祀り、神に祈り、神に捧げるものである。  この世界は、神に見捨てられ、裁きを受ける身だ。およそ百年あまり前に世界各地で勃発した大戦、そしてラグナロクと呼ばれる、世界の終わりの始まり――もはや、神は我々人類を祝福するものではない。  だが、それでも人々は祭を捨てることが出来なかった。  街の中央に立つ教会が今なお祈りと憩いの場であるように、祭もまた、人々の笑顔を繋ぐ行事として変わらずに愛されているのである。 ●花と水路と風車の街、カティンカ  教団本部の北部に位置するヴァン・ブリーズは、長い年月をかけて浅瀬を干拓し、土地を広げてきた地区である。そのため、海面よりも海抜が低い土地が多いことで有名だ。干拓地を利用した農地や花畑、排水用の風車の立ち並ぶ光景が名物となっている。  海辺の街カティンカは、典型的なヴァン・ブリーズの一都市だった。その名は、かつてこの街の開発を主導した女実業家カティンカ・メイエルに由来する。  街には広い水路が張り巡らされ、人や荷を運ぶために利用されている。ひっきりなしに強い潮風が吹く一帯には風車が立ち並び、排水の他、麦や豆を挽く動力となっていた。アシッドレインが降り注ぐようになって以来、海洋にはしばしば強大なベリアルが出現するため波打ち際に降りることは禁じられているが、遠目には依然として美しい水平線を背景に無数の風車が回る景色は、一見の価値があった。  花卉園芸と造園業が盛んであり、干拓地の花畑のみならず街全体が可憐な草花に彩られている。その景観の良さを目当てに訪れる観光客も少なくない。  中でも街の象徴となっているのは、メイエル水路公園である。  街と共に歴史を刻んできた公園は、名の通り水路が縦横に通り、のびのびと枝葉を伸ばす木々の木陰とも相まって、真夏でも涼のある場所だ。整備された遊歩道の左右には種々様々な植物が植えこまれ、季節ごとに異なった趣で来園者の目を楽しませる。  公園では軽食やおやつの類も提供されているが、特に評判なのは広場に面する露店群『メイエル・トゥリプ』で販売されているストロープワッフルだ。  さくさくとした食感の薄い生地にたっぷりのキャラメルシロップを挟んだこのお菓子は、パン屋がケーキ生地の余りで作ったものを端に発するありふれた庶民のおやつであるが、メイエル・トゥリプのそれは人の顔が隠れるほどの大きさで有名なのだった。シナモンがよく効いた風味は、老若男女に人気である。  現在メイエル水路公園では、毎年恒例の夏至祭に向けて準備が進められていた。 ●アジサイが彩るカティンカの夏至祭  日の出から日没までの時間が一年で最も長くなる夏至の日は、多くの地域で特色豊かな祝祭が催される。  カティンカでは、太陽の恵みに感謝し、一日中音楽を奏で、日が沈むまで踊り、陽光をめいっぱい楽しむのが恒例だった。  日頃は少額の入園料をとっているメイエル水路公園もこの日ばかりは無料で、普段の閉園時間よりも遅い日没まで開放される。 「今年も順調ね。ちょうど夏至祭の頃に満開になりそうだわ」  街の基礎を築いたカティンカ・メイエルの子孫、アニタ・メイエルは、自身が経営する公園をひととおり見回って満足げに呟いた。  初夏の今、園内では東方島国ニホンから持ち込まれて以来アークソサエティでも人気を博すアジサイが瑞々しく繁っている。中旬の夏至祭のころには、より大きく、より華やかに改良されたガクが鮮やかな赤や青に色づき、人々の目を楽しませてくれることだろう。 「アニタさま~!」  呼び声が近づいてくるのに、アニタは振り返った。  遊歩道を駆け足でやってくるのは、秘書のロビン・コーレインだ。まだ年若いライカンスロープの少年で、秘書といっても実際には身の回りの細々としたことをこなす雑用係というところだが、何事にも一生懸命な仕事ぶりが気に入っていた。  ロビンはふっさりとしたリスの尻尾を揺らしながら、一通の封書を掲げている。 「教団からお返事が届きました!」 「ありがとう。今ここで確認するわ」  アニタはロビンを手招きし、数段の階段を上がった先にあるガゼボへ入った。石の椅子に腰かけ、手紙の封を開く。  人が集まり賑わいが大きくなればなるだけ、喧嘩やスリといったトラブルも付き物になる。メイエル水路公園では、警備員を配すのはもちろんとして、浄化師を招待することにしていた。特殊な戦闘力を持つ彼らは、存在するだけで抑止力になる。それに、日頃世話になっている浄化師に祭を楽しんでもらいたいという気持ちもあった。 「ああ、良かった。依頼を受けてくださるそうよ」 「それなら安心ですね。年々来場者が増えていますから。……今年もハートのアジサイは見つかるでしょうか」  群生するアジサイを見回して不安げに呟くロビンに、アニタは小さく微笑んだ。 「それは天の思し召し次第ね」  ガクを持つ花が多数集合して半球状に咲くアジサイは、雨や花自体の重み、生育の状況などによって形がいびつになることがある。近年、その中でも『ハート型に似たアジサイを見つけると幸運が舞い込む』と噂されているのだった。恋愛関係が長続きする、片想いが実る、そんな風に言う者もいる。  今年も、多くの若者たちが幸運のハートを探しにやってくることだろう。  もともと、夏至祭には縁結びの役割もある。  午後五時を過ぎた頃から広場では篝火が焚かれ、思い思いに踊る人々で一杯になる。その場に居合わせた者同士で気ままに踊ることも珍しくないが、日没間近を告げるラッパが鳴り響いた後の、最後のダンスだけは話が別だ。日が沈みきるその瞬間に誰かと手を取り合っていることは、すなわち、相手に好意がある意思表示になるのだ。  だから、その気のない者は日暮れ前に帰ってしまうし、恋を成就させるべく意気込む者は夕暮れに合わせて想い人を誘う。言うまでもなく、すでに恋人同士の二人は、他人からダンスに誘われたりしないよう、しっかり手を繋がなければならない。  メイエル水路公園の夏至祭は、まさに恋する者たちの宴と言ってよかった。 「沢山の人に楽しんでもらえると良いですね」 「そうね。そのためにも、準備を万全にしなくてはね」 「はい!」  夏至祭当日に向けて、まだまだやることが沢山ある。二人はすっくと立ち上がって、ガゼボを後にした。
光に背を向けた子
簡単|すべて

帰還 2018-06-30

参加人数 8/8人 月村真優 GM
 飛び交う金切り声。ガラスの割れる音。甘ったるい酒の臭いを身にまとった知らない男。それをお父さんと呼べという母親。  いつの間にか運び込まれていた、煙草の臭いの染みついた家具たち。  あの場所は元々自分のもので、そこにはずっと自分のぬいぐるみがあった。今はない。もうそんな年ではないでしょうと取り除かれてしまった。  僕を受け入れてくれるものなど、ここにありはしないのだ。何一つとして。  背に突き刺さる騒音に一人耐え続けることにも飽きて、少年はこっそりと家を抜け出した。誰にも気づかれることはなかった。気づいた上で気に止められなかっただけかもしれないが。でも、自由だ。  隠していた文庫本を抱きしめて夜道を歩く。飛び出したのはいいけれど、一体どこに行けばいいだろう。道に並ぶ家にはそれぞれ灯りが点っていて、それぞれの家庭がそれぞれの時間を過ごしている。越してきたばかりで友達のいない少年には決して手に入れることが出来ない光だ。星と似たようなものだ。一切の温もりもくれないくせに、輝きと切望だけを投げて寄越すのだ。  嘲笑う光から逃れるように、少年は街の外れへと向かっていく。  そこには仲間外れであるかのように一本だけ街灯が佇んでいるのだ。  少年は知っている。その灯は彼を拒まない。そして、そこなら誰も邪魔しない。  お気に入りの街灯のもとに座り込み、彼は文庫本を開いた。自らの魂を守るように、空想の中に解き放つように、彼は手の中の本に没頭していく。吹き付ける夜風を遮るものは何もなかったが、不思議と寒さは感じなかった。  街の灯りから背を向けていた少年は気づかなかった。  夜といえども人影がまるで見当たらないということに。  皆、アシッド確認の報告に避難を急いでいたのだ。  星の光から目を背けていた少年は気づけなかった。  星々の輝きがいつの間にか遮られて届かなくなっていたということに。  忍び寄るアシッドに覆い隠されてしまったのだ。  かくして、諸君のもとには市街地の片隅で暴れる少年型ベリアルの討伐依頼が舞い込むことだろう。  怪物がかつて少年だった頃の家はとうに破壊された。光が標的となる事を知った市民たちは窓を固く閉ざしそれぞれの砦に立て籠もっている。  頑なに周囲に命を近づけまいとする姿は、どこまでかつての面影を残したものだったのだろうか。  取り残された街灯が寂しげにその背中を照らしていた。  その身を世界に囚われ続け、遂には魂までも繋がれてしまった少年が解放される日は訪れるのだろうか。それは諸君にかかっている。